アーティストよファンを守れ、ファンよアーティストを守れ

2001/03/27,30
2004/04/13

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浜崎あゆみと宇田多ヒカルのアルバム発売日がいっしょになったら・・・

浜崎あゆみのファンである私としては、あまり気にしていなかったのですが、ベストアルバムの発売日が2001年3月28日になったところ、これが宇多田ヒカルのセカンドアルバムと同じ発売日だったので、これが大騒ぎとなりました。
飲み屋さんでお店のママと話していたら、「発売日が同じって、あゆがヒカルに挑戦したっていう話し、聞くわよ。だって大物アーティストって同じ日にアルバムの発売をしないものでしょ」なんて話題を聴きましたし、他のほうからは「あゆのヒカルつぶしだ」なんて話しまで出ます。後者の話題なんて、噴飯もので驚いてしまいました。3000円のアルバムを1枚しか買えなくて、あゆを買うかひかるを買うかでみんなが悩むならいざ知らず・・・今の時代、そりゃないだろうと思います。両方が好きなら、両方買うでしょ、普通なら・・・。
だいたい、ベストアルバムってのは今までの曲だけを集めているものであり、新アルバムってのは新曲を中心にしているもののはずです。比較すべきものではないし、私の感覚からすると、ベストアルバムってのはあんまり売れるものかなあと思っていました。もっともモーニング娘とか大ヒットになったようですが・・・。普通なら新曲のほうを買いたいですよね・・・。もっとも浜崎あゆみのbestは、普通のベストアルバムではありませんでしたので、驚いてしまいました。全く新しいミックスが行なわれており、曲によっては歌い直しになっていたからです。過去2年の総決算であり、これからの浜崎あゆみがどこに行くのかを示しています。
大物アーティストが同じ発売日にアルバムを出さないというのは、たしかに過去にはいえる事実です。これは、優劣がつくのがイヤだという、アーティスト側の心理の反映であると言われていましたし、そうしたことを特集している番組を見たこともあります。歌謡曲の時代には、明確な不文律ですらあったようです。特に、日本のレコード業界はもたれ合いのようなシステムが働いているようで、独特な因習がいろいろとあるようです。
でも、ファンにとっては大騒ぎでした。私は浜崎あゆみのファンクラブの会員なのですが、ファンクラブのbBSに宇多田ヒカルのファンなのか、東芝emiの回し者なのか、へんな人が乱入して浜崎あゆみを誹謗したり、どんちゃん騒ぎをしていました。宇多田ヒカルのファンなんか、結構危機感(なんの危機感なのかちっとも理解できないのですが) があるのか、そうとう結束したのではないでしょうか・・・(^^;
実際には発売日の前日にcdがお店に入荷します。そのためか、今回は大体のお店では、27日に販売を開始しました。私の場合は、会社の近くにヨドバシカメラ本店があるので、午後3時に買いに行きました。限定グッズの抽選があるので、早いほうがいいよなあ、役得じゃあと思い、気持ちよく買いに行ったのです。で驚いてしまいました。レジに人が行列していたのです。見てみる限り70%くらいが宇多田ヒカルのアルバムを買っていました。来ている人の世代はいろいろ・・・おかしいですよね・・・、私は勤務時間中に買うこと多いのですが、その理由は空いているからです。これは明らかに発売タイミングについて情報がリークされており、明確な意思を持って人が集められていることを示していました。私は店頭で前日の午後3時に発売になることを知ったのでしたが・・・。
この行列を見て私が思ったのは、東芝emiとavex、やりやがったな、ということでした。
つまり、ありえないであろう対決の構図をあおり、ファン層に活入れをして、販売速度を速めようという、えげつない戦略が見え隠れしていると思ったのです。

発売日って、意外と限られている

私が27日に購入したアルバムは、浜崎あゆみA BESTと、椎名林檎の真夜中は純潔でした。宇多田ヒカルのアルバムは中古で買おうと思いました。すべてのアルバムを持っているのですが1,2回聴いたらおしまい(終わりではなくて、ラックに収納したままという意味です)になってしまったので、ちょっとでも安いほうがいいかなあと思ったのです。どのアルバムも素晴らしいのですが、なんかそれだけと思うものが多くて・・・。浜田麻里のアルバムを宇多田ひかるのアルバムのスタッフが作れば、素晴らしいだろうにな、なんて思うこともありました。このホームページの伝言版にいらした浜田麻里ファンの方にそう書いたら、お返事をいただけませんでしが・・・。
ちょっと脱線しました。
1年は365日あるわけで、アルバムはいつ発売してもよさそうなものですが、実のところそんなに発売日は多くないんです。いくつか発売日を決める要素をご説明します。
オリコン

日本のミュージシャンが全員気にしているオリコンの週刊売上統計は、水曜〜翌週の火曜までです。つまり、売上数字を一気に上げるためには、水曜日発売がいちばん効率的となります。そう、3月28日は、水曜日です。
水曜日の数は1年で52回、つまり1年の中で発売日は52日しかありません。
3月28日発売のアルバム、浜崎あゆみと宇多田ひかるのアルバムだけではありません。私は、椎名林檎の新しいシングル、楽しみでしたし・・・。

会社の決算期

アルバムは、CDを出す企業の売上になるわけで、アーティストには著作権料が支払われるだけです。ですから、浜崎あゆみや宇多田ヒカルがアルバムの発売日を決めているのではなく、CDを出す企業が発売日を決めるというほうが正しいわけです・。
企業とは、利益を出すための経済組織であり、その利益は会計単位ごとに計算をします。この会計単位は、税法に基づけば1年です。この単位はとても大きな意味があり、企業の業績を決定するからです。東芝emiもavexも会計年度末とは3月末です・・・。ここの売上を上げれば、会社の業績が上向くこと請け合いです。ですから、予約販売により、確定的な売上とすることで数字を稼ぐ努力が行なわれます。両社の努力がそこに集中したのは当然でした。ここの勝利は東芝emi、前から予約を受け付けていたのですから、当然といえば当然です。ですから、avexは発売日に社員の総動員に入りました。これも当然といえば当然・・・。
なお、今の時代、国際会計基準では4半期(3ヶ月)おきに決算をしますので、年4回の会社の決算期による、発売圧力があります。

製造工程のスケジュール

CDの製造は、最後のアルバムの組み立ては人が行ないます・・・まだ自動化できていないのです。ですから、製造工程には一定の限界があります。ですから、発売日に間に合わない場合ってあります。もっとも、今回の場合は、両方のアルバムは両社とも最優先でしたでしょうから、その為に遅れたアルバム、少なくないかもしれませんね。東芝emiは自社工場で製造しているので、椎名林檎も同時に出せたのはえらいというか、うまい戦略というか、たいしたものだと思います。

こうした考えてみると、発売日が3月28日って、東芝emiとavexの企業としての必死の選択だったように思います。話しによると、avexの方が後から決めたのですから、同社のほうがより必死だったかもしれません。これは会社四季報を見ると、納得行くところがあります。同社には、浜崎あゆみだけがドル箱であり、浜崎あゆみだけが同社の評価を決めるキーワードだからです。
このような背景から、発売日がぶつかった背景は、avexが浜崎あゆみのイメージを損なう可能性があるとしても、発売日をいっしょにしたかったのかな・・・なんて思っていました。イメージを損なう理由は、東芝emiが意外としたたかな戦略を取る会社なので、かならず浜崎あゆみによる宇多田ひかるに対する攻撃という構図を流布すると思ったからです。そんな構図って、最悪ですよね。で、avexがそれを想定しないなんて、思いませんでした。余談ですが、いちばんはじめは浜崎あゆみの発売日に宇多田ヒカルのアルバムの発売日が合わされたのだと思っていました。ここで説明したようなことを前提にすれば、そう思った私の発想は、自然だと思います。

したたかな各企業の戦略

東芝EMIについて、私はあまりいい印象をもっていません。かつては、素晴らしい会社で芸術的に意味のあることを、採算に関係なくてもやる会社だなあ・・・と思っていました。でも、そうした印象を打ち砕いたのが、椎名林檎の取り扱いでした。
椎名林檎は、歌舞伎町の女王なんて感じの売出しでした。ちまたの噂では、新宿生まれの新宿育ちとか、歌舞伎町のライブハウスで活躍して、デビューした、なんて話題でした。実は、それで困惑してしまいました。最近は頻度が落ちていましたが、新宿や渋谷のライブハウスはよくチェックしていたので、そうした出身であればあれだけの内容ですから、すぐに気づいていたと思うのですが、デビューするまで知らなかったからです。私は自分のアンテナが機能していないんだなーと落ち込んだのですが、実はそうした話しがすべてウソということを人から教えてもらい、納得しました。
椎名林檎は福岡育ち、いろいろと音楽活動をしていてイギリスに短期に渡っているときにデビューを決意しました。そしてすぐにデビュー、1曲目は振るわず、2曲目、歌舞伎町の女王で大ヒット、その際に東芝emiは彼女について虚飾に満ちたうわさを流布することに成功し、ヒットに拍車をかけました。東芝emiはうわさを立てる能力に長けているんですね。(コンテンツを書いた時点での)今でも公式ホームページでは新宿系自作自演屋と書いてあります。歌舞伎町の真中に立たせたら道に迷いそうな感じがするのに・・・。ついでにいうと、椎名林檎の担当プロデューサーは、同じタイプ?の別なアーティストまでデビューさせました。これに不満だったのか椎名林檎は渡米してしまいました。アーティストにとってプロデューサーとは企業の窓口でありすべてです。椎名林檎をいいように使い売上をあげて、さらに二匹目のどじょうを同じプロデューサーが狙えば、いやになったと見る方が自然です。一般的に、企業の良識としては、競合製品は取り扱わないというのがあります。ま、今の時代ですからそれが必要になる場合もありますが、そうしたときは部門を変えるくらいのことはどんな企業でもします。いくらなんでも、同じプロデューサーが担当するなよと思うほうが自然です。こんなに私がこの件について、うがあと思った背景には、かつて椎名林檎の噂を信じて、どこでライブをやっていたのか、また、やるのかを知ろうと躍起だった過去があるからです。そうした中でこのような話しを教えてもらい、その説得力に納得して、そしてよけい憤りを東芝emiに強く感じてしまいました・・・(^^;

ここで話題にしていた椎名林檎の二匹目のどじょうとは矢井田瞳のことでした。最近では、椎名林檎のカラーを脱することが出来たのではないでしょうか・・・。結構私は好きです・・・今は・・・。結果よければすべて良しとしても、いいデビューではなかったね・・・東芝もいい加減にしたら・・・。

企業倫理よりも売上を重視するというのは、大人の論理ではなく子供の論理です。老舗が故の問題点かもしれません。日本の企業のモラルハザードとしてここ数年非難されている話題と同根の論理です。経団連の会長だって、いつから経営屋が経営者とすりかわったのだ、日本の企業で・・・と嘆いているくらいです脚注1。人によっては、こんなことでと思うかもしれませんが、それこそ今の時代で話題になっているl利益の追求しか考えていない現代の日本の企業文化の悪弊というものだと思います。アーティストを守り育てることが出来ないなんて、あってはならないと思います。
avexは、大会社という印象のお話しが多いですが、そうでしょうか?実体を素直に直視すればユーロビートの輸入会社が発展した会社です。浜崎あゆみが初めて松浦氏脚注2と会った際にavexを知らなかったと驚きをもって書いている本を何冊か読みましたが、知らないという反応の方が自然な気がしてしまいます。そしてavexは小室哲也のお陰で今日の礎を築きました。avexには若い会社が故の活力があり、失敗もあります。1999年代の同社の最大の失敗とは、ファン層の育成ノウハウを持たなかったために、アルバムの人気が出てもそのフォローをできず、アーティストが短命化していたことでした。ですから2000年は、ファン層育成の為に大々的に投資、そして2000年上期は赤字になってしまいました。これを救う圧力はすべて浜崎あゆみに集まったのです。浜崎あゆみの感じた苦悩は、そのまま曲になっていますが、その背景には彼女だけがavexを救う力を持っていたこと、そして彼女にavexは賭けるしかなかったという背景があると思います脚注3
avexのアルバム発売計画がかなり頑張っている背景には、このような同社の実情が見え隠れしています。
昨年の夏にavexの社長が証券会社向けに講演をしました。avexという会社を説明し、証券会社から投資家に株を勧めてもらう必要があるからです。企業経営者の義務でもあります。上期の赤字を報告し、下期にこれを解決し、今後(なんと)8年間の営業計画を示しました。そして、同社は利益率が60%もある企業であり、如何に素晴らしいかと説明をしたそうです。それを聞いた証券会社のお偉いさんの感想はこうでした。浜崎あゆみただひとりに企業の浮沈をかけている企業ではないか・・・小室哲也に逃げられた理由はアーティストに充分報いていないからではないのか?だから利益率が60%などという異常な話題が出るんだ。浜崎あゆみが袂を分ったり使いつぶしてしまえば来年もわからない企業がどうした根拠から8年計画を立てられるんだ・・・・脚注4

アーティストよファンを守れ、ファンよアーティストを守れ

今回の浜崎あゆみと宇多田ヒカルのアルバム同時発売は、実はコマーケティング脚注5、つまりavexと東芝emiの協力の結果ではないかと思っています。ふたりのファン層はそう重なっているとは思えず、互いに足を引っ張り合うよりも、話題性の先行とファン層の引き締めの効果があったと思います。ですから、両社とも通常よりも大きなアルバムの販促が期待できます。素直な話し、浜崎あゆみも宇多田ヒカルも充分な財と名声を得ているのですから、どちらのアルバムがより売れてもそう大きなダメージはないと考えることが自然です。また、企業の論理からしたら、アーティストやファンは利用し尽くすほうがいいのでしょう。このようなコマーケティングの判断はトップが行なえばいいわけで(だから真相は闇の中ですね、ずっと)、企業の現場としては全面戦争でしょう。お釈迦様の手のひらから出られない孫悟空のようなものです。しかし、もしもそうだとしたら、操られるように気を病むファンを誰が思いやっているのか・・・。
企業がアーティストとファンの間に介在しています。アーティストのアルバムがばんばん売れれば、そのアーティストが守銭奴みたいに思うファンもいるようですが(たしかに芸人にはそうした人多いみたいな気もしますけど)、実際には守銭奴は企業です。あまり知られていませんが、アーティストが歌を歌うだけであれば、本人に入る著作権料はわずか2%です。消費税のほうが遥かに高い。作曲家や作詞家に入る著作権料だって、似たり寄ったりです。大部分の売上はCDの発売会社のものです。これは資本主義である以上やむを得ないことです。企業が黒字であるから様々なアーティストを支え、いろいろなファン活動を支援できるのです。しかし、企業には守るべき一線があります。ファンやアーティストを裏切ってはならないということです。最近は、なんとなくこの一線が怪しい気がする。
浜崎あゆみがROCK'inJapanで、自分から頼んでインタビュー記事を出しました。avexによる一切のチェックを排して出版されることを浜崎あゆみが強力に希望し、実現しました。そうした中で、自ら作曲した曲の至らない点を語り、それでもミリオンセラーになったことについての率直な感想を述べています。私は、浜崎あゆみが自分の真実を伝え、扇動されているかもしれないファンを守ろうとしている必死な姿に感動を覚えました。そんな彼女も、ファンの支持が無ければ、音楽活動すら続けられないでしょう。アーティストは、支持者があってこそ、活動を続けられるのです。

アーティストよ、ファンを守れ
ファンよ、アーティストを守れ

企業よ、アーティストとファンを裏切るな・・・



脚注1

そごうの前社長がバブル崩壊はだれにも予想できなく自分には責任は無いと語った言葉に対する感想です。経営者とは企業道徳を守り、社会に貢献し、そして利潤を生み出すものであるという意味で語っています。日本に限らず、企業の公益性はあらゆる国で道徳的規範として浸透しています。ただし、中国文化圏にはそうした概念はいまところ無いようです。

脚注2

avex専務取締役の松浦勝人氏。同社の株式13.2%である305万株を所有しています。サンミュージックとの契約を自然解消し、渋谷109あたりでいつも遊んでいた浜崎あゆみを、クラブで遊んでいるときに偶然知り合、その後に再び偶然にカラオケで再会後に浜崎あゆみに強く歌手になることを勧め、繰り返し勧誘し、浜崎あゆみが遊びに退屈しているときにかけた電話が功をなし、今の浜崎あゆみの始まりとなりました。同氏が浜崎あゆみの資質を看破したことは逸話になっています。
余談ですが、音楽関係者たちは、浜崎あゆみが有名な資産家M氏と関係があり、松浦氏にデビューを依頼したという話をまことしやかはなしています。M氏は遊び人というか、自称漁師ですが、高潔な人物なので有り得ない話題です。クラシック音楽に限らず、音楽界というのはふざけた人が多い業界のようですね。凄く下卑た話題が多いので、話をしていて驚いてしまいます。

脚注3

会社四季報2001年春号によるavexについての解説は以下のようになっています。
[続伸]浜崎あゆみのシングルアルバムがヒット。音楽出版・アーティストマネジメント子会社の収益拡大にも貢献。01年度もあゆみ効果持続。海外アーティスト売込み、ロック部門強化も推進。二十五%の連続配当性向公約し、表記程度なら増配も。
[新人]韓国人歌手「BoA」の5月日本デビューめざす。販促宣伝費注ぎ込みミリオンヒットめざす。自己株償却を検討。
こんな風に、浜崎あゆみについての評価と、avexがなにをやろうとしているかとか、紹介されています。2001年も浜崎あゆみの勢いが続くと、会社分析の専門家も評価しているわけですね。また、BoAのデビューに総力を注力することも説明されてます。浜崎あゆみ以外の柱を打ち立てないと、企業としては問題だからです。株主に対して、すべてを説明しているわけですね。

脚注4

avexの株は時節柄もあり続落中です。もっとも、ここで述べたような感想は、投資家一般にいえるのかも知れません。脚注3で説明したように、BoAのデビューに総力をかけるのは、このような投資家の見方に対する同社の答えであるわけです。

脚注5

マーケティングを複数の企業が協力して行なうことです。


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