ネット社会の実相
(浜崎あゆみファンサイト荒らし問題の真の意味)

2002/03/31

2001/12/31に行われた浜崎あゆみのカウントダウン・ライブで関係者がアンコール時に着席していたのを見て、ファンたちも座れない席なのにと思い、立つことを求めた発言を利用して、ネットワーク内でフィクションを作り出し、犯罪的なネットワークゴロが多発した事件があります(いまだに続けている者もいるようです)。これを「浜崎あゆみファンサイト荒らし問題」といいます。
この件に関して、千折(ちおる)さんからかるばどすほふの掲示板に以下にご紹介するようなご投稿を頂戴しました。この一件について、千折さんらしい明快な分析と批判をしていらっしゃいます。ご投稿いただいていた内容を拝見して、日本におけるネットワーク社会において重要な問題だったと私も再認識しました。そこで、千折さんのご許可を頂戴し、千折さんの書かれた内容をコンテンツに転載し、合わせて私のレスとして、この「浜崎あゆみファンサイト荒らし事件」の意味を明らかにしたいと思います。
その意味とは、この「浜崎あゆみファンサイト荒らし問題」の本質が、醜いどろどろした欲望の暴走であるということです。

事実関係について、こちらをご覧ください。
2002/06/01

また、このコンテンツで詳しくは説明していない、浜崎あゆみを貶めたい人たち、そこに何が見出されるのか、それを説明しているコンテンツがあります。外伝II 妖精と・・・魔法と・・・現代です。あわせてお読み戴けると幸いです。

2004/04/06

ネット社会における悪意の増殖と暴走について

No. : 179
Name : 千折
Date : 2002/03/24(Sun) 18:43
 例のCDl「事件」についてです。実際に当日現場にいて一部始終を見ていたかるばどすさんにとって真実は明かであり、あえて取り上げることも馬鹿馬鹿しいと思っておられるのはもっともですが、現場にいなかった者として、この「事件」がどう馬鹿馬鹿しいのかちょっと検証してみましょう。
なお、この事件の経緯から浜崎あゆみ及びファンサイトを攻撃している連中のことは「2ちゃんねる側」と表記しています。別に2ちゃんねるが組織としてやっているわけではありませんが、2ちゃんねるをベースにしている連中が中心になってやっていると思われますので。
 今回の「事件」の馬鹿馬鹿しさは「被害者」の不在にある。「2ちゃんねる側」の言い分によると、「事件」の「被害者」は身体障害者であったそうだ。だから障害者差別であり許せないというわけだが、つまり明確に特定できる被害者が存在すると主張するわけだ。ところがこの「被害者」当初から影も形もない。実際かるばどすさんを始めとする当日現場に居た人からはそんな身障者らしき人は見あたらなかったと証言されている。
そしてavex側からオフィシャルサイト上で正式に、座っていたのは関係者であって一般客ではなかったと声明が出された。本来なら、この「騒動」はこれで終わりである。被害者のいない「事件」では解決のしようがない。どんな名探偵でも解決不能である。事件には加害者と被害者の双方がいる。これはそもそも事件ではないと言うしかない。
 ところが終わりにならなかった。「2ちゃんねる側」が、公式声明を嘘だと決めつけたからだ。ならば嘘であることを証明せねばならないことは理の当然である。
証明は簡単である。その身体障害者である「被害者」が表に出れば良いだけだ。
そもそも最初から出てこないのが変であるが、よしんば、何らかの理由で表に出なかったとしても、avex側が存在しないと公式声明したのだから怒って障害者団体なりに訴えて当然であろう(2ちゃんねるのような評判の悪いところに任せたりするはずはないが)。私ならそうする。ところがやはり全く影も形もない。これではavexの公式声明のとおり関係者であって被害者の身体障害者などはなから存在しないとしか判断しようがない。また「2ちゃんねる側」も特に探そうともしていないようだ。
 まともな知能を持った第三者ならば、どちらの主張に理があるか、もはや考えるまでもない。かるばどすさんが対応するだけ馬鹿馬鹿しいと判断したのも当然である。
 しかし、「2ちゃんねる側」は、これだけ明確な結果を突きつけられながら、まったく態度を改めなかった。さらに彼らは卑劣なことに本来まったく無関係なファンサイトに攻撃の矛先を向けたわけだ。要するに今更引っ込みがつかないということだろう。面目をなくすというわけだ。彼らは浜崎あゆみに謝れと主張するのだが被害者がいないのに誰に謝れと言うのか?考えただけでも馬鹿げている。
 ファンサイト攻撃は、要するにファンを攻撃することで浜崎あゆみを苦しめようとする作戦である。
これはTVのヒーローもので、ヒーローに勝てない悪役が、ヒーローを支持する市民を襲い、「おまえたちがこういう目にあうのは○○のせいだ。恨むなら○○を恨め」と捨てぜりふを残して去る。このパターンである。
 ワイドショーでこの問題が取り上げられたとき、それはネットの無法者による浜崎あゆみファンサイトへの卑劣な荒らし事件として取り上げられたそうである。当然である。それ以外の何物でもない。
一般論で考えても何らかの事件の被害者が、加害者の家族や友人に仕返しすれば弁護の余地はない完全な犯罪行為である。ましてや、今回は虚構の「事件」を口実に「被害者」でもない者が、これまた「加害者」でもない無関係な者を攻撃対象としているのだから、なにをかいわんや。ネットチンピラによる悪質な荒らし事件以外の何物でもない。
 彼らはやればやるほど、世論の支持と同情は浜崎あゆみ及びファンサイト側に集まり、自分たちへの反感、怒りになるだけだということが未だに判らないらしい。まったく度し難い愚かしさである。断片的な情報で一部の扇動者にあおられ、いいように利用されているわけだ。
しかし、馬鹿だからといって彼らの無法行為が許されるものではないことは言うまでもない。
 それはともかく、今回の「ファンサイト集団荒らし事件」は、ネット社会における情報衆愚主義の危険性をあぶり出した。
誰でも情報発信が出来ると言うことは、今までなら発言を封じられていた良識のない虚言屋も発信できるということだ。インターネットによる情報民主主義は、こういう連中によってたやすく情報衆愚主義と化す。
 今までも有名人は悪質なイエロージャーナリズムに悩まされてきたが、彼らはプロであるため、これ以上やったら訴えられるという線を見極めており、それ以上はやらない。
しかしネットの虚言屋にはそういう見極めがない。その結果、今までのイエロージャーナリズムなら書かなかったようなでたらめをも平気で書くことになる。(実際avexの人間の名前を騙って書き込みしているのには驚いた。完全な詐称である)こういう連中にも「言論」というある意味剣よりも強い武器を与えるのがインターネットである。
 しかし今回、浜崎あゆみ本人が自分では何も言わなかったことに対する批判もあるようだ。
だが何を言えというのだろうか。
もちろん浜崎あゆみは謝罪せねばならないようなことは何一つやっておらず、謝るなど論外である。謝る相手もいないわけだし。もし浜崎あゆみが本当にうっかり身障者を傷つけるようなことをやったら、彼女は土下座してでも謝るだろう。また仮に浜崎あゆみに僅かな瑕疵があったとしても、浜崎あゆみの「謝罪」を引き出すことを目的の一つとしてネット荒らし屋が無法行為をやっている以上、絶対に譲歩してはいけない。
今回の荒らし事件に関して、もし浜崎あゆみが謝る相手もいないのに「自分が謝っておさまるものなら謝ります」なんて言ったら周りのスタッフは力ずくでも止めるべきである。それは無法なネット荒らし屋を増長させるだけだからだ。
言って良いのは「荒らし屋に屈するな」とファンサイトに檄をとばすことだけだ。
しかし浜崎あゆみの性格や考え方からみて、そういう戦闘的なことは言えないだろうということも想像がつく。
結局、浜崎あゆみ本人としては、黙って荒らしがおさまるのを待つしかない。
これはこれでかなり辛いであろう事は想像できる。
 ちなみに「荒らし」に対して法的手段を取るか否かは、各サイトにしか決定権はなく、浜崎あゆみサイドではやりようもないことです。
 今回のようなインターネットサイトにおける「集団荒らし事件」がこれで最後というわけではないでしょう。浜崎あゆみについて今後も起きるかどうかは判りませんが、他のアーティストや、別ジャンルで起きる可能性はあります。
まともに考えたらまるで話にならないような脆弱な「論拠」で悪質な荒らしを行う連中がいかに多いかを今回の事件は証明しました。類似の事件に対する対策を各サイトは考えておかねばならないでしょう。
しかし荒らしを恐れて、荒らし屋のご機嫌取りをするようなことは絶対にやってはいけないことは明白です。暴力団のご機嫌取りをしてはいけないのと同じですね。
 この「事件」についての私見を述べてみましたが、余計なことだったかもしれません。
もしかるばどすさんが、このボードでこの話題は載せたくないと思われるなら、削除します。

私からのご返信

この返信は、掲示板には記載しておりません。
こんにちは、千折さん
> この「事件」についての私見を述べてみましたが、余計なことだったかもしれません。
> もしかるばどすさんが、このボードでこの話題は載せたくないと思われるなら、削除します。
いえ、ご投稿頂きありがとうございました。実は私はもうこの問題は収束しきっていたのかと思っていました。そこで2chを見てみたのですが、いくつかのスレッドではまだ続けているようですね。素直なところ、再び、あきれてしまいました。
私は、千折さんのご見解に全面的に同意します。
また、この事件の本質は、荒廃しきったネットワーク内の心理風土そのままであると理解する必要があります。
その理由をこれからご説明したいと思います。
まず、前提知識として、いくつか公知の話題をご説明しようと思います。

■すでに知られているネットワーク社会における人の特性 / 前提知識として

インターネットの普及はここ10年程で急速に進みました。
この間に、ネットワーク上に形成される社会が、どのような傾向にあるかについて分析が進められてきました。この分析は、これまで積み重ねられてきた行動心理学や社会心理学の成果に基づいています。
これから述べる分析は、2chなどの非同期型ディスカッションフォーラム、チャット、MUD(multi User Dungeon)のような、集団的ネットワーク社会において、一般的に成立しているものです。

実在する擬集性の高い集団

ネットワークで構成される集団、たとえばメーリングリストや2chのスレッドなどには、擬集性が高い集団が成立しやすいことが知られています。集団の中では、相互に影響しあい、互いに影響を受けます。そして、時間経過とともに、集団規範が生まれ、独特な用語の使いまわしが生まれ、それに対する同調が求められるようになります。たとえば、2chであれば、スレッドにもよりますが、正論的な発言に対する抑制は頻繁に登場しているので、そうした集団規範が存在しているのでしょう。

集団成極化 極端な話題が展開する集団の進み方

ネットワークによる集団内の議論には、極端な意見が多くなり、中庸な意見が存在しなくなるという特徴があります。その理由として理解されていることの一つが、社会心理学で知られている集団成極化(grouppolarization)現象です。私たちの常識としては、人が話し合うと中庸な結論に至ると思うわけですが、実際のところ、集団の結論のほうが個人の結論よりも極端になるという現象があります。これを集団成極化現象といいます。後に述べますが、ネットワークでは極端な集団成極化がおき易い要素が多くあります。
集団成極化の結果、奇妙な考え、過激な発想が集団に共有され定着していくことは、頻繁に発生します。
千折さんが指摘するように、一般的妥当性がないにもかかわらず、2chなどで異様に主張される内容は集団成極化の典型的な例でもあります。
また、集団を構成する要素である、オンライン・ペルソナ(説明は直下をご覧ください)を理解する必要があります。

オンライン・ペルソナの実態

私たちは、自身のあり方について、一定のルールを課しています。それにより、自身のペルソナ(persona/仮面)を確立しているのですが、これを変えることは、社会生活における危険が伴う場合もあるので、簡単には出来ません。

上司や親に対して従順である習慣を選んでいる人が、対立を選ぶことは難しいですよね・・・

しかし、ネットワーク内では、全く別個な人格として、存在することが出来、そのときに自身が選ぶ別なペルソナをオンライン・ペルソナといいます。
私たちは、ネットワーク内では、オンライン・ペルソナ間でコミュニケーションを行います。通常の対面的コミュニケーションの場合、様々な方法で相手に対して情報を伝達することが出来るのですが、ネットークでは極めて限られた情報(大抵は文字)で、相手とコミュニケーションします。
オンライン・ペルソナで、最も基本的な情報は、性別と、年齢です。ネットワークでコミュニケーションを行う際に、頻繁に尋ねられる話題でもあります。一般的なコミュニケーションでは、年齢を尋ねることは失礼なのですが・・・。

余談ですが、私の年齢は対面コミュニケーションでもほとんど理解できないようです・・・・
すごく若く見えるみたいで・・・
ネットワークでもそうなのでしょうか・・・・千折さんも、私の年齢に驚かれた印象が・・・(^^)

これまでは、行動心理学に基づいて、専門的なコンサルタントが立ち会う場でインターパソナルスキル(人間関係能力)のトレーニングを受ける場合などに、別なペルソナを試すチャンスがありました。

このような心理学的ベースに基づく人間関係の教育は、企業向けセミナーとして実現されています。私も何回かそうした教育を受けたことがあります。結構お高いんですよね・・・(^^;

そうした管理の元で安全にできたわけです。しかし、ネットワーク内では標準的に自身の通常とは異なる、別なペルソナを取ることが出来るのです。言い換えると、抑制が解除されます。ただし、だれの支援や管理もない状態で・・・。
その結果なのでしょう、オンライン・ペルソナの挙動としてディスカッション・フォーラム内の挙動として以下のような行動が目立つ傾向があります。

これらは直感的にも理解できることですが、以下の内容は統計的にも確認されています。

□女性に対する特別な行動が目立つ

ネットワークの利用者は男性が多いため、女性として認識されるオンライン・ペルソナに対して、支援的、または、攻撃的な行動が多く観測されます(攻撃的な行動には、無視も含まれます)。
この問題は男性と女性というジェンダー(性)のもつ固有の性質として理解すべきではないという意見が少なくありません。女性が男性のポジションになった場合、その行動が男性と同一になるという報告が多く報告されていますし、男性と女性の比率が同率に近づいた場合に、ここで述べたような傾向が少なくなるという報告もあります。つまり、環境変化に対応して行動が変化すると予想されています。

□攻撃性の表出

フレーミング(会話の連鎖のことです)の中で、攻撃が行われる例が少なくありません。攻撃が行われれば、報復があることも自然で、そうなったフレーミングとは、そのまま闘争でもあります。
深刻なフレーム戦になると、人格攻撃が入り込み、当事者には話し合いをしている意識しかないのですが、第三者から見たときに、到底実社会では認められない行動が見られます。このような挙動の中で、でっち上げなどによる、当事者にも意識できる醜い状況も、よく見られることはご存知のとおりです。
この背景には、オンライン・ペルソナの獲得による、抑制解除のためであると考えられています。また、匿名性がそれに拍車をかけているとも考えられています。
ところで、心理学的調査は、欧米で先行して行われているのですが、そうした中では、ネットワークペルソナ間での関係調査に集中しています。たとえば、浜崎あゆみのように実在するペルソナに対する攻撃や、でっち上げについては、調査対象から除外されています。その理由は簡単で、欧米における倫理感の中では、取り扱う対象にも値しないと考えられているというのが、実情です。

□支援性の表出

攻撃性と全く逆なのですが、献身的支援性の表出も多くあります。
もっとも、悪意に荷担するという献身的支援性も見られたりするので、攻撃性、支援性そのものに、良い、悪いという性格があるわけではありません。

オンライン・ペルソナの分類

オンライン・ペルソナについて、興味深い分類があります。これは、ゲーム開発者でMUD管理者でもあるRichardBartle.がMUD Reserchで述べているものです。
あまり知られていませんが、ゲームの設定やその開発には、心理学的必然性に基づいているものが多く、ここでご紹介した論文の内容も、結果としてMUD環境内で心理学的に洗練された結果に基づいたものです(Rivhard Bartle本人は心理学者ではありません)。この資料で紹介されているプレーヤーを分類している図を、ケン・ウィルバーのホロンの性格を示す図に対応して変形して、以下にご紹介します。


MUDの場合、ゲームであるために行動原理が限られており、そうした中で図に示す4種類に分類できると、richard Bartleは述べています。この分類は、ホロン(人が認識できるもの凡てをホロンといいます)分類として、そのまま対応します。

達成者
ゲーム関係の目標達成(経験値や宝物の獲得)を目標に行動

探検家
ゲーム全体像を調べ様々な知識の獲得を目標に行動

社交家
他の人とのコミュニケーションを目標に行動

殺し屋
他の人の妨害を目的に行動

この中で、殺し屋は少数です。ほとんどのMUDでは、このタイプのプレーヤーは問題とされており、強力な排除が行われる場合も少なくありません。

図中に、「世界の認識」とありますが、これは個が認識する世界像を意味していますので、個的で内面的な性格のものです。

この図は、配置だけですが原図を変換したことにより、そのままその分類の特徴を(ホロンの性格として)理解することが出来るようになります。


達成者
個的な行動により、個的な(内面的な)認識を追及する

探検家
相互的な行動により、個的な(内面的な)認識を追及する

社交家
相互的な行動により、相互の認識を追求する

殺し屋
個的な行動により、相互の認識を追求する

つまり、ここでいう殺し屋の個性とは、利己的な行動により他者との関係を求める傾向であることがわかります。この殺し屋という名称は、その行動様式からそのまま名づけられているのですが、ゲシュタルト心理学において犯罪者のゲシュタルト崩壊様式として説明されているものと一致しているのが、面白いところです。

社会との平衡を保とうとするあまり、消極的で引っ込み思案になり、社会の重圧に耐え切れず、同時に社会生活から孤立し、受け身な立場に追いやられる人は、神経症と呼ばれている。神経症の人は、自己の欲求に気づかないので、自己の欲求を満たすことはできない。また自己と外界との区別がうまくできず、社会を必要以上に過大視し、自己を過小評価する傾向がある。一方、犯罪者は、他者がどんな欲求をもっているかに頓着しないので、他者の気持ちを踏みにじる傾向がある。犯罪者もまた自己と外界との区別が正しくできないからである。しかし、神経症の患者の場合とは逆に、犯罪者は自己を過大視し、社会を過小評価する傾向が認められる

ゲシュタルト療法-その理論と実際- / p41 より
F.S.パールズ著/倉戸ヨシヤ監訳 日高正宏・井上文彦・倉戸由紀子 訳
ナカニシヤ出版/ISBN4-88848-120-2

ここでは明示して説明していませんが、犯罪者もまた、自己の欲求に気づかないので、自己の欲求を満たすことは出来ません。

さて、Richard Bartleの資料に戻りますが、これら4種類の分類の中で、どのような組み合わせの出会いが、なにをもたらすかについて説明しています。その中で注意すべきなのは、殺し屋と社交家の出会いです。

恐らくこれが最も破滅的なプレーヤーグループタイプの組み合わせである。憎むべきところは、社交家には殺し屋に対してなす術がないことである。これは殺し屋の自身の罪であり、MUD内のセンチメンタルで武器を取り扱うことを知らない社交家を探し、見つけると攻撃する(殺し屋はそうした示威に無上な喜びを感じるだけである)。

Hearts, CluBS, Diamonds, Spades: Players Who Suit MUDsより

こうした状況は、MUDでなくても、ネットワーク上で様々な場面で発生しています。
ところで、MUDでは、サイバーレイプと呼ばれる行為が報告されてます。これは、女性のオンライン・ペルソナをレイプしている形にして参加者に示すものです。ネットワークをサイバースペースといいますが、実際のところ、心理的な空間そのものであり、サイバーレイプは心理的にはレイプとして成立するものとして理解されています。殺し屋という分類よりも、犯罪者という分類のほうが当てはまるかもしれませんね。

■状況の分析

さて、基礎的な話題の説明が終わりましたので、状況を分析していきたいと思います。

2chとは、どのようなものなのか

千折さんが、

別に2ちゃんねるが組織としてやっているわけではありませんが、2ちゃんねるをベースにしている連中が中心になってやっていると思われますので。

と述べていらっしゃるように、2chという組織があるわけではありませんが、すでに述べた擬集性の高い集団として実在しており、今回の問題の中心的な担い手であることは、衆目の一致するところです。
2chというサイトは、すでに説明したように非同期型ディスカッションフォーラムです。
その特徴は、

管理者(リバイアサンといいます)の不在
匿名性(emailアドレスを含めて不要)
オンライン・ペルソナの基本要素の欠如(年齢、性別もない)

また、ネットワーク規範がスレッドごとに存在しています。ただし、それらのスレッドは、容量に最大があり、また、自由に作成することができるので、ネットワーク規範はスレッドごとに作られるというよりも、平均化して2ch全体にあると理解するほうがいい場合もあるようです。
このような性格ですので、オンライン・ペルソナの基本的な傾向のまま集団成極化が極端に進行しやすい素地を持っています。

今回の問題の中心はどのようなものか

今回の中心になっているスレッド群には、問題が発生した直後から注視していたのですが、以下のようなホラーキー(ホロン階層)が確認できると思います。
2chの利用者 > 問題のスレッドグループの利用者 > 発言者 > サイト荒らし実行者

ホラーキーとは、ヒエラルキーのような経路的階層ではありませんので、注意してください。

これらの各要素は、独自の性格を保持しています(ホロンの基本ルールに従っていました)。
2chの利用者全体からは、今回の問題について批判的な発言も少なからず存在していました。ですから、2chというよりも、問題のスレッドグループの中が、本質的な分析すべき対象でしょう。

余談ですが、問題のスレッドグループの多くは証拠隠滅のためか、削除されています。
問題発生時に詳しく見ていたので説明ができる次第です。

問題のスレッドグループの利用者ですが、見るだけの人たちが多くいたと思われます。
その数は正確には掌握できません。実は、問題のスレッドグループには、かるばどすほふも数箇所にターゲットとして繰り返し載せられていました。その結果のかるばどすほふへのアクセス数は、統計データとして抽出できた記録からは最盛期でも週間800くらいでした。統計データが抽出できないものも多かったと思いますが、とはいっても週間2000くらいであったのではないかと思います。

このアクセスは、かるばどすほふだけのものですので、わざわざこちらまで訪れていただいた数に過ぎません。ただ、一般の無料サーバーにより実現されているファンサイトには十分過負荷だったかもしれませんね。かるばどすほふ本体は、企業と同水準の能力をもつネットワークとサーバーですので負荷のうちにも入らないのですが、昔使用していた無料掲示板のようなサービスには過負荷でしたので、現行の掲示板システムを組み込んだという経緯があります。
余談ついでですが、私はPealによるCGIのような原始的なものは趣味に合わないので使用したくなかったのですが、使用しているサーバーがUNIXなので掲示板作成のためやむを得ず使用しました。幸いにパブリックドメインのCGIスクリプトを利用できたのですが、構造に手を入れる必要があったので、初めてのpealをネットワーク内の文法資料を見ながら直す必要があり、掲示板の作成に2時間もかかってしまいました。ひどいフラストレーションを感じた次第です。このことには、結構腹を立てました。

おそらく、こちらへのアクセス数の数百倍くらいのアクセスがそのスレッドに、そしてスレッドの数だけ乗じたアクセスが、問題のスレッドグループにあったとおもいます。
この中で、発言には以下のような分類が可能でした。

煽動発言
今回の問題の理論的な背景
信条は様々
身体障害者に対する差別的発言の傾向は2chの他のスレッドにも散見されており、同一の傾向の発言が多かった

サイト報告発言
ファンサイトのURLを報告する発言

サイト荒らし報告発言
ファンサイトに対していやがらせの書き込みを実行したり、プログラムを作成してターゲットにしたサイトを過負荷にしたりした実行者で、その結果を報告した発言
かるばどすほふの統計から判断すると、この発言者の数の数倍の者が実行していたと思われる

■煽動発言の特徴

煽動発言ですが、これは今回の事件以前から、他のスレッドでも浜崎あゆみ関係でかなり様々な発言が行われていました。そうした過程で、浜崎あゆみ関係のスレッドは、かなり前から浜崎あゆみを貶めたいという願望を感じさせる集団成極化が成立していました。

この背景に性衝動や、紹介しませんでしたがアドラーが説明するような権力衝動があることは、隠せない事実でしょう。

つまり、今回の問題以前から、異常な状態であったわけです。
そうした中で、2chでは様々なスレッドに登場している差別的発言で、今回の「浜崎あゆみファンサイト荒らし問題」についての内容が「ヒット」したわけです。
すでに述べたように、オンライン・ペルソナの傾向のままに集団成極化しやすい2chですので、ちょっとしたキーワードが追加になれば可能でした。それは、「正義はわれわれにある」ということです・・・

かるばどすほふ掲示板22で「浜崎あゆみファンサイト荒らし問題」について、「大人式に書かずに「風になれ!」式に書いてみると、形式操作段階の意識の人から見たときに「お客様は神様、故にお客様になんにもいうな」と考える論理が背景にあると思います。つまり、「お子ちゃま」なので、いくら説明したって、わかりゃしません。」と書いています。その本質的な背景は、集団成極化した状況に飲み込まれて、事実の判断能力もないということを述べたものなのですが、用語説明が必要であるため、別な表現にしました。
それに対して、かるばどすほふ掲示板28、29で2ch参加者の方?からresがありました。それに対して、私は「事実はまったく違う、ネットワークでの主張の信頼性は低い」とかるばどすほふ掲示板30,31でresを行っています。フレーミングはそれで終結しました。

この発言を行うオンライン・ペルソナのタイプは様々でした。
この中で主張されている「正義」の多くは、一般論としてはもっともらしく聞こえるのですが、素直に考えると、事実に基づかない主張に、どれだけの論拠があるというのでしょうか。
自身のイマジネーションを無責任に述べることが出来る環境の中で、浜崎あゆみを貶めたいという感情で集団成極化が成立している環境の元にあるオンライン・ペルソナの挙動として、これらの発言群は理解できます。率直なところ、教科書どおりの狂乱状態でした。

これら煽動発言の背景について詳しく解説したコンテンツがあります。
妖精と・・・魔法と・・・現代です。
現代における、未分化で認識されなくなった基底的意識に翻弄されている現代人について説明しています。

■サイト報告発言

浜崎あゆみのファンサイトのurlを報告する発言です。
それらのリンク先を40〜50ほど無作為に見て驚いたのですが(こういうところに私の職業的感覚が発露していますね・・・)、サイトを運用している管理者が女性であったり、女性が中心であるサイトを多く見つけていました。そうした参加者は、他愛の無い社交的な会話を楽しんでいるサイトが多かったのが印象的です。
先にオンライン・ペルソナの分類でご説明した、「社交家」のサイトが多かったのです。このことから考えると、この報告を行っていたオンライン・ペルソナは「殺人者」タイプが多かったのではないかと思います。

かるばどすほふは、荒らせるものならやってみたら、という感じで報告されていました。つまり、「社交家」タイプでないサイトであることを理解していたわけです。「殺人者」タイプは、センチメンタルな「社交家」タイプを探して攻撃するというパターンにそのまま当てはまります。

ただ、ここでもファンサイトからイメージされるオンライン・ペルソナが女性であることがキーワードになってきます。率直なところ、サイト報告発言群の本当の背景は、性衝動が多かったと考えるほうが、自然でしょう。

どうやってそうしたサイトを見つけるのか考えたときに、へらへら笑いながら女性サイトを執拗に探している姿を連想してしまい、ちょっと冷たいものを感じました。

■サイト荒らし報告発言

浜崎あゆみのファンサイトを攻撃した結果を報告する発言です。
この発言者はそのまま「殺人者」タイプであると考えて差し支えありません。また、サイト荒らし実行者でもあります。
すでに説明したように、「殺人者」タイプと「社交家」タイプの交わりは、最悪の結果をもたらします。
これらの発言には、ファンサイト管理者からの「女性だから攻撃するのか」とか、「もうやめてください」という発言を楽しそうに転載しているものが多く見られました。
嬉々として報告しているその状況は、実行者の本質をそのまま明らかにしています。煽動発言には、十分理性的なものも多かったのですが、これらの発言にはそうしたものには微塵もありませんでした。
サイト荒らしの実行の本質は、これらの発言群を見る限り、どのような説明をしたところで、性衝動そのまま、もしくは権力衝動そのままに、暴走しているだけであることがわかります。

■サイト荒らしの実行者

サイト荒らしの実行者数ですが、これは正確にはわかりません。サイト荒らし報告発言の発言者の数倍程度ではないかと思うのですが・・・。
ただ、ホラーキーの最上位層に位置する「サイト荒らし実行者」は、その下層にある「発言者」に支えられていたわけで、広義には「発言者」もサイト荒らしの実行者であると言えるのかもしれません。

問題の本質

千折さんが指摘されていらっしゃるように、今回の問題は、異様な様相を示しています。
結局、事実も真相も、これらの問題には関係ない状況なのです。
その背景を説明するため、これまで分析された社会心理学的分析をベースにご説明してきました。

今回の問題の本質は、醜い、どろどろなものであるということです。
ですから、ファンサイトは、そのようなものに屈してはならないし、
浜崎あゆみサイドは関与する態度をとってはならない。

このことは、実は多くの方がすでに直感的に感じているのではないでしょうか・・・


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