デジタルにしかできない撮影
フォーカス・スタッキング
概要
デジタルカメラは、本質的にフィルムカメラと異なります。かつて使用されていたフィルムの代わりに、デジタル化するための撮像素子を使用することで、まったく新しい技術的側面が表れてくるからです。デジタル化していることと、連続撮影で多数の写真を撮ることができることで、まったく新しい撮影技術を実現できます。
かるばどすほふでは、rawデータ現像やHDRIなど、デジタルでしか撮影できない技術をご紹介していますが、他にもさまざまな技術があります。
ここでは、フォーカス・スタッキングという、レンズの被写界深度をそのままにしながら、マルチショットにより、写真の合焦する範囲を意図する範囲全体に広げる方法をご紹介します。
フォーカス・スタッキングは、特にマクロ写真で有効な技術です。

2009/04/04

フォーカス・スタッキングとは

写真を撮っていて、厄介なことの一つが、被写界深度のコントロールです。
被写界深度は、焦点距離とF値、センサーのサイズで理論的に決まります。
被写界深度を十分に取りたい場合は、F値を上げるしか方法はなく、暗くなるばかりです。

ですから、旧来の撮影技術では、マクロ撮影はライトやフラッシュを多用する場合も少なくありませんでした。それでも、十分な被写界深度をとることができない場合もあります。

別な方法で、センサーが小型のコンパクトデジタルを使用するという方法もありますが、その場合は、背景などをぼかしたくても、ぼかすことができないので、やはり撮れる写真を制御するすることができません。

このような、被写界深度を制御する新しい技術として、フォーカス・スタッキングがあります。

フォーカス・スタッキングは、焦点をずらして撮影した複数の写真を合成して1枚の写真とする技術で、焦点が合っている部分から写真を合成するものです。

論より証拠で、以下の写真をご覧ください。
100mm F2.8 + 2倍マクロで撮影したものです。F値は解放、被写界深度は1mm程度でしょうか…。
合成している写真数は、30枚程度です。撮影は、室内でポンとフィギアを置いただけで、特別な工夫をしているわけではありません。明るいマクロレンズを開放で使用して、被写界深度の浅さを利用して、背景を飛ばしているだけです。

特に、絵も修正していませんので、フィギアそのものの雑な作りの部分も、そのまま見ていただけます。見た目はきれいでも、拡大すると結構雑な作りなんですよね。
絵の甘い感じは、レンズというよりも被写体の特徴です。

使用しているソフトウエアは、helicon focusです。

フォーカス・スタッキングのサンプル
撮影データ LEICA Digital-Module-R + LEICA R9 + LEICA APO-MACRO-ELMARIT-R 100mm F2.8 + ELPROFocus Stacking 30 Multi Shot
rawデータ撮影後 Phase One Capture One Version4ホワイトバランスを適時選択して現像してから処理

気をつけなければならない点として、フォーカス・スタッキングを使用すると、すべてにピントが合うイメージとなるため、遠近感がピンと来なくなります…

また、合成処理の過程で、ピントが外れた絵が組み合わされるので、合成アルゴリズムによっては、その過程でゴーストっぽいボケが合成されるのを防ぐことができません。この処理は、Photoshop cs4のように、フレーム合成によるような、簡易型の合成処理のほうが、ボケが入りにくくなります。

以下に、ピントを決めちゃっているため、かえって平板に見える例をご紹介します。

フォーカス・スタッキングのサンプル
撮影データ LEICA Digital-Module-R + LEICA R9 + LEICA APO-MACRO-ELMARIT-R 100mm F2.8 Focus Stacking 30 Multi Shot
rawデータ撮影後 Phase One Capture One Version4ホワイトバランスを適時選択して現像してから処理

このサンプルで使用しているフィギアは結構大型です。下の写真に至っては、フォーカスを15cmに渡って併せています。率直なところ、こんなに大きなものにfocus stackingを応用するのは、どうかなとは思います。
通常の撮影方法で、このように撮るのは、不可能に近いものですが、フォーカススタッキングのおかげで、しっかりと撮影で来ています。また、合成処理の過程で除去しにくい「滲み」が、面白い効果になっています。この滲みは、Helicon Focusの合成処理において、拡大/縮小の際に、どうしても避けがたいもので、完全になくすためには、かなり工夫が必要です。

ただ、被写体そのものの合焦範囲がある程度狭ければ、このような「滲み」はほとんど発生しません。
ですから、花のような、一般的なマクロ写真であれば、とても容易にきれいな写真を撮ることができるでしょう。
以下に、合焦範囲を狭めている例を示します。この写真も、室内でセットも組まずに、カーテンの前にポンと被写体を置いて何気なしにとっているものです。

フォーカス・スタッキングのサンプル
撮影データ LEICA Digital-Module-R + LEICA R9 + LEICA APO-MACRO-ELMARIT-R 100mm F2.8 Focus Stacking 15 Multi Shot
rawデータ撮影後 Phase One Capture One Version4ホワイトバランスを適時選択して現像してから処理
撮影データ LEICA Digital-Module-R + LEICA R9 + LEICA VARIO-ELMAR-R28-90mm F2.8-4.5 ASPH 15マルチショットでフォーカススタッキング
rawデータ撮影後Phase One Capture One Version4ホワイトバランスを適時選択して現像してから処理
 
撮影データ LEICA Digital-Module-R + LEICA R9 + LEICA APO-MACRO-ELMARIT-R 100mm F2.8 Focus Stacking 48 Multi Shot
rawデータ撮影後 Phase One Capture One Version4ホワイトバランスを適時選択して現像してから処理

関連コンテンツ

以下は、focus stackingで撮影した撮影写真が収録されているページへのリンクです。

2009

-広告について-

Google
  Web www.calvadoshof.com