生の音がいちばんいい??
生の音がいい音と信仰しては、いけない

ステレオで音楽を聴き始めた人が、はじめに誤解する事があります。それは、「機械で再生した音よりも、生の演奏の方がいい」と理屈で信じてしまう事です。これは、先にご説明した「正しい音」のパラドックスの一つです。
こうした考えは以下のようなことから思い付くのではないでしょうか。
1. 録音した音を再生するのがステレオ
2. 生の演奏は気持ちよかった
3. 機械の再生した音は気持ち良くない
4. だから生の演奏を彷彿とさせるのが目標
これは、理屈が飛躍しすぎています。
実は生の演奏されている音楽と、録音して再生した音楽は、同じ音楽と音に端を発しながら、まったく異なるものになっています。
みなさんがコンサートなどで音楽を聴くときは、どのように聞かれているでしょうか?
これはクラシックとかロックにより全く異なる状況になっていますので、あんまり簡単に述べるとまずいと思います。ですから、分けてご説明します。
クラシックの生演奏を楽しむとは

クラシックの場合は、聴衆席に座って聞きます。これは、実際にはコンサートホールの中で反響している音を聴いている状態です。では、ここで演奏されている音楽の音は、あなたの聞かれている席が最良の状態でしょうか?。これはすべての場合で否です。楽器のすべてはどの位置で音を聞くかにより、まったく異なった音色になります。たとえば声楽家がまっすぐに向いた状態と、斜めを向いた状態では、まったく異なった音になってしまいます。コンサートホールはそうした問題を解決するために、多分に反射音を聞かせる事で、差異を小さくするようにしています。しかし、これは音を作っているだけです。ですから、生の演奏会をいろいろと聴かれるようになると「このホールはけっこういいなあ」とか「なんだ、ひどいホールだな」なんて感想を持つようになります。
クラシック音楽を生で楽しむ経験の豊富な人は、ホールの特徴を理解して、どのようにその演奏を聴きたいか決めて、席を手配します。ですから、ホールも選ぶ場合が少なくありません。だれだって、最高の状態で演奏を楽しみたいですから・・・。
これを録音しているわけですから、大変な事になってしまいます。ホールで音楽を聴くという意味をあまり理解していないと、「録音は聴衆と同じところにマイクを設置して、ホールの響きどおりに音を録のが最善」という結論になります。これはオーディオに初心者の技術者がはじめに思いついてしまう、とんでもない結論のひとつです。しかし、そうして録音したものは、大変つまらない録音になります。もともと、楽器の良い音を録る努力をしていないのに加えて、会場の雰囲気が機械で再生すると無くなってしまうので、どうしようも無い事になるのです。
クラシックの録音を楽しむとは

ですから、多くの場合、録音は最良の音が取れるように複数のマイクを設置するようになります。こうして録音された音楽は、みなさんが演奏会で聞く音とはまったく異なる音に鳴ります。楽器の音は、演奏家はどうしても最良の音を聞けない位置にいます。聴衆もそうです。しかし、録音するマイクは、適切に配置されると、最良の音を選られる位置にあるかもしれないのでする
このように録音された音が、みなさんが聴かれた聴衆席と同じ音で機械から再生されたら・・・異常です。
ステレオによる音楽の再生とは、生の演奏では知る事ができなかった、音楽の実相に迫るものでなければなりません。それは、演奏家や作曲家のイマジネーションに直接触れるものになるのです。
ロックのライブを楽しむとは

ロックのコンサートの場合は、クラシックとまた異なる側面があります。ロックの場合は(最近のジャズも)、PAと呼ばれる電子装置により音楽をコンサートで聴きます。ですから、クラシックの場合よりも制御がいろいろとできます。しかし、困った事に、paそのものは、大きな音を出す事を前提に開発されており、音楽を再生する事に最高の性能を持っていないという事実があります。
また、そうした演奏の録音は、別な問題を持っています。paの設備が再生する前の信号を録音する事がほとんどであるという事実です。ですから、みなさんがコンサートで聴いたものは、録音されていません。
ロックの録音を楽しむとは

こうしたシンセサイザーなどの電子装置の出す音は、再生されて初めて音楽として完成されるわけですので、録音されたこうした音楽は、再生されてからはじめて完成します。
すでにご説明したように、PAは音楽再生として最高の装置ではありません。ですから、あなたのステレオから再生された音楽が、ライブを圧倒する素晴らしさで鳴ったとしても、それは不思議な事ではないのです。いや、そうでなければならないのです。
こうしてご説明してくると本当に「いい音」とは、みなさんがまだ体験した事の無い世界にあるものである事がご想像いただけるのではないでしょうか?
そうしたすばらしい音の世界を楽しむのが「オーディオ」なのです。



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