オーディオの遍歴
第15章
感動させる音などない・・・
でも、意味を明らかにする音はある・・・
■15.01 インデックスとイントロ■


第14章 特別編 いける音は遠くない・・ オーディオの遍歴 INDEX !第16章 音楽よ、届け!

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■ 15.01 インデックスとイントロ
■ 15.02 音がいいとか、悪いとか・・・ 編
■ 15.03 音楽の本質 編
■ 15.04 HDCDとは・・・ 編
■ 15.05 アルバムを創る人々、聴く人々 編







音のいいアルバム・・・って、なんなんだろう?

一般的に「音がいい」といわれるアルバムには、実のところ、ひとつの共通点があります。

有名なところで、あまり異論がなさそうなところを、いくつかご紹介しましょう。

これからご紹介するものは、ちょっと古いアルバムが多くなります。アルバムの制作者の人たちには、いくらなんでもとちょっと異論があると思うのですが、これらの評価は聴く側の素直な気持ちだと思います。なぜ、新しい素晴らしいアルバムをここの紹介では外しているのか・・・なぜ、新しいアルバムよりもいいと思われているのか・・・読み進めていただくとお判りいただけると思います。


CANTATE DOMINO(カンターテ・ドミノ)

propriusPROP 7762(LP)/PRCD 7762(CD) 1976年録音 スウェーデン

右の写真は、ドイツ製の超重量級LPです(ドイツのハイエンド・オーディオ・フェアで購入しました)。アナログのプレスは、現代ではドイツなんかが素材、技術ともに最高級ですね。グラムフォンの特別製造版です。ちなみに、このアルバムは、欧米でも名盤として認められています。

このアルバムは、私にも思い出深いものです。
なにしろ、オーディオを始めた初期のころに知り合ったアルバムなのです。その場所は、オーディオフェアの会場でした。それも、別館みたいに開かれていたホテルの一室です。そのブースのオーナーは、日本ビクター、ラボ東京脚注1でした。開設して間もなかった、ラボ東京の名物所長さんが、初めて日本に紹介したアルバムです。ヨーロッパから出たばかりこのアルバムを買ってきてデモをしていたのです。

もう亡くなられたのでしょうか・・・お年ですので・・・。当時のトランジスタ技術で、菅野沖彦氏と対談しているときに、ご自身のリタイアとラボ東京の設立の経緯を話されていらっしゃいました・・・・。余談ですが、当時のトランジスタ技術は、菅野沖彦氏のオーディオ対談連載があったのです・・・今は昔・・・ですね。今はデジタル技術一色の雑誌ですから・・・。中学時代からトランジスタ技術と電子展望(とうの昔に廃刊になったと思います)が愛読書でした。このころの同級生がデジタルに凝っていて、ttlで加算回路を作ったり、初歩的なaluを作って遊んでいました。私はプラモデルのほうが好きでしたが・・・これまもた、今は昔・・・ですね、実に。

でも、その日のうちに早くも他のブースでもデモに使用していた場所があって驚いたと、そのとき笑っていらっしゃいました。当時の私は高校を出るか出ないかのころだったので、鮮烈な印象をこのアルバムと、名物所長さんに受けました。

このときに、いろいろなお話を伺いました。
曰く、「プライベート盤にすばらしいアルバムが多いんですよね。録音工程がシンプルだからだと思います。また、不思議なんですけどEPにするとSN比がよくなったりします。ノイズくらいの信号だと、レコードプレス時に固化するときに失われてしまう傾向があるんですよ・・・」なんて感じでした。余談ですが、氏はビクターにお勤めだったので、プライベート盤のプレス依頼も多かったため、入手が容易だったそうです。
そして、これに類した話題が、このコンテンツの後半にも出てきます。プライベート盤の質に評価できるものが多いのは、今も昔も変わらないんですね。

CANTATE DOMINOは、このアルバムに収められている曲名でもあります。このアルバムはクリスマス音楽を集めたものですが、音楽的にも美しいアルバムです。教会の中の、豊かに響く音を、シンプルな構成で情緒豊かに聞かせてくれます。
もちろん、CDも製造されています。
余談ですが、お店の人の話では、オーディオシステムのチェックにカンターテ・ドミノを使用する人が今も多いそうです。
ちなみに、CANTATE DOMINOは全世界で15万枚以上が出荷されています。
北欧系のアルバムであるので、輸入業者が不安定なもので、入荷も不安定みたいですが、TOWER RECORDSのような大手であると手に入ると思います。


MUSIQUE DE LA GRACE ANTIQUE

harmonia mundi HM1015(LP)
HMA1951015(CD)
1978年6月録音 フランス

右の写真も、ドイツ製の超重量級LPです(ドイツのハイエンド・オーディオ・フェアで購入しました)。CDは2000年にドイツで再デジタル化が行われたものが発売されています。lpには日本盤あります。邦題は「ミューズへの賛歌 古代ギリシャの音楽」ビクターvic-28067です。でも、ドイツ盤の方がお勧めです。

このアルバムは、フランス、ハルモニア・ムンディで有名な盤のひとつです。ギリシャ古楽を再現したもので、遺跡の壁画などから再現した楽器を、当時の資料を基に演奏したアルバムです。2000年前の音楽ですが、日本の邦楽が伝えるような正確な伝承に基づくものではなく、イマジネーションたっぷりなものと思うほうがよろしいでしょう。

シリーズとなっており、このアルバムがその始まりになります。いろいろと姉妹アルバムがあるのですが、どのアルバムも鮮烈な印象を与えます。このシリーズのアルバムは、どれも名盤として知られています。私の好みで、この盤をご紹介しました。


Star of Wonder

REFERENCE RECORDING RR-21(CD)
1986年2月4-5日録音
アメリカ・サンフランシスコ Saint Ignatius Church

このアルバムは、ご存じない方もあられるかもしれません。Reference Recordings社の初期のアルバムです。Reference Recordings社は、professor Keith Johnson が25年前に立ち上げたレーベルです。初期には、独自に開発したフォーカスドギャップヘッドを搭載したオープンデッキでアナログ録音していました。実は、Reference Recordings社はこれから話題の遡上に上げるHDCDについても深く関係しており、そうした意味でもご紹介することにしました。もっとも、このCDのアルバムはHDCDではありません。

ここでご紹介しているアルバム Star of Wonder は、声楽による宗教曲(というよりもクリスマス音楽ですかねー(^^;)で、CANTATE DOMINOと比較しやすい名盤ですが、それ以外にも面白い特徴があるアルバムです。LPとCDが別々な記録装置で録音されているのです。LPは、独自のヘッドを搭載したアナログ録音、CDはデジタル録音となっています・・・。アルバムで、LPからはCDのうちの3曲が収録されていません。

率直なところ、このアルバムはアナログのほうが、かなりいけています。でも、今はLPの製造はしていないようですね。詳しく調べていないのですが。


ひょっとすると、ここまでご覧になられた方は、あれ?と思われたかもしれません。
すべてアナログ(LP)時代のアルバムだからです。しかも、どの音楽もアコーステック系ですね。まあ、これらのアルバムの時代にはテクノはまだ登場していません・・・この時代、シンセサイザーもまだアナログ技術で作られてたくらいですし・・・。

私が使用しているシステムがフルデジタルシステムなので、アナログのアルバム群をご紹介したことを意外に思われた方も多いかもしれません。たしかに、今でこそフルデジタルシステムをオーディオを楽しんでいますが、もう四半世紀以上もオーディオの趣味を続けているわけですから、アナログの洗礼は十分に受けています。CDを楽しむようになったのは、比較的最近ですね、この1/4世紀の中では・・・。

これらのアルバムは、どれも名盤として知られているアルバムです。

で、普通には「音がいいアルバム」としても、知られています。

ほとんどのシステムで、これらのアルバムをかけると「おおー、素晴らしい」という感じに、素晴らしい音楽が描き出されます。

ここに「音がいい」という話題がでるキーワードを理解するきっかけがあります。

「音がいい」アルバムからは、どのような音が引き出せるのか・・・・

ほとんどのシステムで、「おおー、素晴らしい」と感じられるこれらのアルバムには、共通点があります。それはシンプルな録音であるということです。

現代においてプロと呼ばれる人たちの録音を見ていると、ずいぶんとたくさんのマイクを使用して録音しています。たいていの場合、各楽器ごとに数本のマイクを用意して、多重に録音してします。それを後にミキシングして音楽を完成させます。このような録音方式の場合、ミュージシャンの時間が合わなくても録音できますし、演奏ミスも編集して手直しすることができます。また、音楽の構成について時間をかけて検討を進めることが出来ます。素晴らしいことです。

でも、ちょっと待ってください。このような現代の録音技術は、音楽の制作工程をやりやすくして、ミュージシャンを楽にさせるために発達したものであり、音の質を狙って発達したものだ・・・とは、言いがたいところがあります。でも、これは当然のことです。アルバムと同じような完成度を演奏時に行うことは、簡単ではないからです。

しかし、ここでご紹介したこれらの名盤といわれるアルバムは、それほど多くのマイクロホンを使用していません。また、一発取りと俗にいわれる録音方式で、一回ですべてを同時に演奏して収録しています。ですから、アルバムの制作は、それほど時間を必要としていなかったでしょう。このような方法は、昔には一般的でしたが、今では限られた明確な方針を持って作られたアルバムと、アマチュアが行うくらいではないでしょうか・・・。これは、演奏家にとってはとても辛い録音方法です。なにしろ、アルバムの音を決定するのは、演奏時であり、編集時ではないからです。楽器の音のバランスも、演奏時に決めるわけです。作成する側にとってはデメリットばかりですが、しかし、簡単に「良い音」にすることができる録音方法でもあります。

率直なところ、マイクを多用するプロと呼ばれる人たちの録音方法で、名盤と誰もが信じるようなアルバムは、作るのにはかなり難しい点があります。別にそうした方法が悪いというわけではありません。ただ、難しいだけです。その理由については、後述しています。

この話題で、オーディオ仲間であるゲルピンさんから伺った面白いお話があります。ある音楽家の演奏を、ゲルピンさんのお友達がステレオマイク一本で収録した後に、別な機会にプロの人が録音して、両方ともアルバムになりました。アマチュアのシンプルな録音はその年の優秀録音のひとつとして話題となり、プロの録音は話題にも上らなかったそうです。
私も趣味で録音していた時代があるのですが、自分で録音したものの音の質感の素晴らしさに驚いたものです。そして、市販のアルバムに酷いと思うものが多いことに、不思議にも思いました。
余談ですが、そうした時代の名残でセミプロ用のマイクとか、ばりばりに改造したマイクアンプ中心のNakamichi610とか(もう、回路なんかはオリジナルですもんね。若い頃は時間があったのでなんでもやったので・・・)、まだとってあります。でも、マイクは使っていないので音がもう鈍っちゃったみたい・・・。ゲルピンさんから注意されたことあります。自分で録音していた頃は、アナログ時代だったので、HI COM IIとか友人と何台も持ってましたし、マスターはNakamichi 700IIとかDragon、初期のデジタルレコーダーとか使ってました(民生用のTEACの38-2トラなんかはたいしたこと無くて。オタリのバイアス可変機とか買えばよかったと当時は反省しました。そのころは民生用があったので・・・友人とお金を出し合って買う計画はあったんですけどね)。このころデジタルレコーダーの音質には、けっこう感心しました。でも、テープがビデオだったから、信頼性無くて、ビデオを何台も使いました。
やっぱ、今録音するなら、やっぱハードディスクレコーダーとデジタルコンソールだろうな・・・。でも、マイクは当時も今も、型番とかはあまり変わっていないんですね。そう、マイクの技術は20年も前に完成しています。

ここでご紹介したアルバムは、システムの構成がどのような状態でもある水準に聴こえます。

これらのアルバムは、昔から名盤として知られており、今もそうなのです。しかし、ちょっと不思議に思われませんか?

オーディオ機器の性能は、ここ四半世紀で飛躍的に向上したのではないのでしょうか・・・そうだとすると、これらのアルバムはその向上に対応して、飛躍的にさらに素晴らしい音楽を奏でたのでしょうか・・・?

実のところ、いろいろとシステムを改善していくと感じるのですが、実はこれらのアルバムは、再生するシステムが劇的に進歩しても、それに見合うほど劇的に進歩した音を描き出すことはありません。

これらのアルバムの特徴は、簡単に再生できる、という点にこそ、その特徴があるのです。
そして、シンプルに録音されたものに、このように素晴らしいと評価を受けるものが多くあります。

続いて、それほどにはあまり有名ではありませんが、クラシックではないアルバムで同様な話題をご説明しましょう。


Quelle Voix (vol.1) / 若林圭子

プライベートアルバム/現在は入手不能
1994年日本

このアルバムは、かるばどすほふでご紹介しているシャンソン歌手の若林圭子さんのものです。ご存知の方はご存知の、レオフェレを歌うことでは、今や世界的に知られている人です。コンサートを精力的にされていらっしゃいます。

「声の力」という言葉を聞いたのは、若林さんからでした。

現在は、入手可能なもう一枚のアルバムしか発売されていません。もっとも、店頭での入手は難しいと思います。直接若林さんのサイトに申し込んでください。そちらのアルバムはちゃんとしたスタジオで録音されたもので、プロの手によるものであることがわかります。

しかし、若林さんが語る声の力は、この今は手に入らないこちらのアルバムのほうが、凄いです。このアルバムを私のところで聴いた人は、心に焼き付いてしまうようです。ぞっとするほどの、アルバムなのです。

そして、その音は・・・アマチュアかそれに類する人が、恐らく、マイク2本だけで録ったものだと思います。それも、大してよい設備ではありません・・・音の帯域感が狭いので・・・しかし、凄い力のある音なのです。恐らく、アマチュア的な録音であるため、原盤に相当するものがなく、アルバムとして再製造できないのでしょう。時々見かける、プライベートcd制作業者によるものかのかも知れません・・・。

余談ですが、このアルバムは入手した際にすごく感心したもので、当時に、今は無きにんじんくらぶで3枚追加で入手しました。で、その最後のアルバムを、かるばどすほふをご覧になって若林さんのファンになられた方に差し上げました。この前の吉野千代乃さんのライブでご一緒した際に「音の話題をされるお気持ちがわかりますね、このアルバムを聴くと、違いますよね」と仰っていました。よかった・・・・。


No Limit / Mari Iijima

プライベートレーベル
1999年

飯島真里は、一回引退し結婚し、ロスに渡り、結婚が破れた後に、音楽の世界に返ってきてくれました。

このアルバムは、引退した状態であった彼女が自身でロスで作成して、インターネットで発売しはじめたアルバムです。プライベートレーベルです。プライベートレーベルは、日本ではあまり見かけませんが、欧米では結構見かけるように思います。かるばどすほふでご紹介しているLorrena MacKennittもプライベートレーベルですよね。

いまでもwww.marimusic.comで入手できます。

親友が飯島真里のファンでもあり、聞かせてもらったところ、その鮮烈な音に驚いて私もと入手したものです。

アルバム自身は、プロデューサーが入っていないためか、結構曲のムードに偏りがありすぎて、ちょっと音楽の趣味が私にはなんなのですが、飯島真里ってこういう音楽の人なのだなーと納得させるものがあります。

このアルバムも、とてもシンプルなアルバム製作過程なのだろうなーと実感させるものがあります。


綾戸智絵

frends /
East Works Entertaiment EWCD-0014
1999年8月、9月

なんか、入手経路が普通に買えないものばかりご紹介しているので、どこでも手に入るものを・・・。

このアルバムは、私が綾戸智絵の虜になったアルバムです。初めの曲、Take Me Home,Conutry Roadを聴いたときに、数フレーズ聴いただけで、涙が止まらなくなってしまいました。それは、音楽の素晴らしさだけではなく、そのアルバムとしての作りもあったと思います。音楽の魂を捕らえた作り方でした。そんなときに、オーディオという趣味をしていてよかったなあ、と本当に思います。

このアルバムの録音、編集を行ったONKIO HAUSはたいしたものです。独立系のスタジオで、独自のマスタリングもしています。こんなスタジオが日本にもあるんだぜ!という感じですね。うれしい限りです。

このアルバムの音は、洗練された比較的にシンプルな録音の成果だと思います。シンプルな作り方が良く聞こえやすいぜ、という話題にはあてはまるアルバムではありませんが、アルバムの作り方は、一発取りに近いものだと思いますので、ご紹介することがおかしくは無いと思います。ただ、他にご紹介したアルバムと異なり、システムの改善が進むと結構深い音のするアルバムでもあります。そうした点は、現代的なアルバムですね。

現代的なアルバムの話題は、もうちょっと先で詳しくご説明します。


音がいい・・・それは再生が容易というのと同義語

これまでご紹介した話題で、そのままにシンプルに録音したものがいいという誤解はしないで頂きたいと思います。シンプルでもどうしようもない録音、いくらでもありますので。たとえば、クラシックによくあるのですが、ホール天井近くにぶる下がったマイクで一発取りなんてアルバムもありますが、そんなのは、音楽にもなににもなっていません。演奏中に舞台の上に行ったことがある人ならわかるのですが、そのあたりはろくでもない音がする場所ですので・・・。

実は、昔に録音に凝ってた頃にそうした位置から聴いた経験がありまして・・・
これまで説明してきたのは、再生が容易なアルバムにはシンプルな録音が多い傾向があるということです。
そして、そうしたアルバムに、良い音のアルバムと思われているものが多いという事実なのです。
実は、私もかなり長い間そうしたことに気付くことが出来ませんでした。
それを気付かせてくれたのは、再生が難しいアルバムとの出会いだったのでした。

再生が難しいアルバム・・・って、なんなんだろう?

その昔、私が使用していたシステムはアキュフェーズとMACintoshやinfinityのスピーカーなどでした。そうした時代に、なんて雑音・・・と思い、やがて成り行きから、KRELLやApogeeのスピーカーが来てから、おお〜、と驚いたアルバムがありました。つまり、再生が難しく、音楽を受け止めることが出来なかったアルバムがあったのです。

そうした再生が難しいアルバムをいくつかご紹介しようと思います。


Arcadia / The Alefe

PONY CANYON PCCA-00117
1990年10月17日発売、録音日不詳

私にはじめて、再生が難しいアルバムというものの存在気付かせてくれたアルバムが、このアルバムです。

この時代の私は、The ALFEeもよく知らず(なにぶん、もうこのころはテレビの音楽番組も見ていなかったので・・・あ、今も見ていないな・・・)、発売された際に何気なしに買ったのでした。そして、聴いてみて驚いてしまったのです。なにしろ、一曲目のArcadiaが、「ぼんぼこボコボコ」としか聞こえなかったからです。もう、音楽という感じではありませんでした。そりゃもう、雑音という感じでした。

この当時の私のシステムは、cdがやっとまともに聴けるようになってはいたのですが、アキュフェーズとマッキントッシュやインフィニティのスピーカーを使っている時代でした。当時の私は、そんなに悪いシステムとも思っていなかったので、出てきた音から無条件に「なんてひどい音のアルバムなんだ」と思いました。そして、このアルバムをお収い(おしまい:私の用語で聴かなくなることをいいます)にしたのでした。

こうした話題は、今も世の中で繰り返されていると思います。

しかし、やがて何年か経ち、システムはKRELLとなり、スピーカーもApogeeになったころ、何気なしにこのアルバムを聴いてみて驚いてしまいました。

私が知っていた音では、全く無かったのです。(ちょうど、このころです)

もう、驚いてしまいました。

そこに描き出された音楽は、私の知っていたArcadiaではなく、全く違ったものでした。ゾクゾクするほどすばらしいものだったのです。クラシック一辺倒で、やっと浜田麻里を楽しめるようになった私には、信じられないような別な系統の音楽でした。

驚いた私は、パソコン通信でそうした話題を発信したのですが、あまりわかってもらえなかったようです。ただ、他の人も私と同様に、このアルバムの音の印象は、「ぼんぼこボコボコ」、であることはわかりました・・・(^^;

このアルバムは、今でもシステムの再生音がどのようにバランスが崩れているのか知るのに、とても便利です。このアルバムがちゃんと聞こえない限り、そのシステムの再生の状態には致命的な問題があるのだと思います。

余談ですが、このホームページを作成中にジャケットのデータを取り込もうと思ったのですが、貸し出し中でした。このアルバムの再生が難しいよって、貸していたのです。で、返してもらおうと思い貸した先に寄ったのですが、まだ上手く鳴らせないからと残念そうだっので、ジャケットだけ返してもらってきた次第です・・・。
さらに余談続きですが、今のシステムで聞くと、もう、感動ものですね・・・このアルバム・・・。この時代の出来事もいろいろと思い出してしまいます。そう、ソビエト連邦が崩壊するのはこのアルバムから2年後、新しい世界の登場の予感に世界が打ち震えていた時代です。平和と愛を叫ぶことがふさわしい時代でした。

このアルバムとの出会いは、私をThe ALFEeのファンにしたのですが、同時に、クラシックしか知らなかった私に、音の世界の奥の深さと、自分が使用していたシステムの能力を教えてくれました。それは、そうした機器の開発者たちの音楽の造詣の深さでもありました。

このアルバムの特徴は、徹底的に音が作られていることです。当時のスタジオによる音の加工技術の粋が尽くされていたのではないでしょうか・・・。ちゃんと再生できると、それはもう素晴らしいファンタジーなのですが・・・上手く再生できないと・・・ぼんぼこボコボコ、なのでした。そして、恐らく、ほとんどの場合は、ぼんぼこボコボコ、なのです・・・。あは・・・。

このアルバムでの体験以降、ちょっと聞いただけでは、音がいい、悪いと簡単に思わなくなりました。


GREEN and GOLD / MARIA KAWAMURA

日本コロムビア 32CC-2500
1988年 録音日不詳

今も絶大な人気を誇る「ファイブスター物語」の原作者永野護と川村万梨阿が作り出したアルバムです。

この曲の冒頭の、WONDER STORYは・・・ドラムの音が変・・・に聞こえやすいんですね。このアルバムも、当時の編集技術やアナログエフェクタの能力を試したのではないかと思います・・・このドラムは位相を制御して、聴こえ方をどんどん変えているんです・・・。

そして、大抵のシステムではそれがわかりません。得体が知れない音がぼんぼこするだけなのです。

このアルバムの中で、お〜っという曲は、表題曲 GREEN and GOLDですね。川村万梨阿の透明な声が、輝いています。ちゃんと鳴ると・・・(^^;

このアルバムは、Arcadiaがちゃんと聞けるようになった後、ひょっとしたら誤解しているアルバムが他にもあるかもしれないと思い、当時のアルバムすべてを聞き直す中で見出したものでした。

このアルバムで、川村万梨阿はいいなーと思うようになり、当時作成していたLD(企業用のLDでソフトウェアの映像マニュアルです。7作くらい作りました、10年間で・・・コンピュータ技術者が映像のプロデューサーをやってどうすると、ずいぶんとからかわれました・・・(^^;)に起用しようと思ったのですが所属会社から断られてしまいした・・・また余談モードですね・・・。
余談次いでですが、川村万梨阿の旦那さん、永野護です。このアルバムの後のストーリーですね。
またまた余談ですが、浜崎あゆみのアルバムI am...Flower Gardenでも、WONDER STORYと同じような処理が行われています。その処理を聞いて「ああ、なつかしい・・・」と思ってしまいました。時代が違う浜崎あゆみのアルバムにおいてこの処理がどのようなプロセッサにより行われたかはわからないですが、別に難しい処理ではありません。このような処理をした音の再生は、PAを実現しているプロ用オーディオ機器の手には負えないみたいで、ライブで聴いていたときには、片鱗はあるのですがまったくちゃんと聞こえなかったですね・・・。コンシューマオーディオ機器とプロ用オーディオ機器の狭間は、深いですね。そして、PAなんかに使うプロ用機器は、音から見るとガラクタ・・・。壊れにくいことが一番の世界ですからね、しようがないけど。


これらのアルバムの特徴は、アナログ技術の時代で、精一杯の編集と音の加工が行われている点にあります。

そして、そうしたアルバムが、音がわるい・・・いや・・・再生が難しいアルバムに見られる共通点なのです。

これらのアルバムは、うまく再生できると・・・え、というほどの世界が描き出されます。その音の世界は、ライブには存在し得ない、まったく異なる世界です。ただ、それを味わうためには、かなり基本的な点を押さえていかないといけない点があります。

ただ、これまでにご紹介してきたアルバム、まだ現代には至っていませんね・・・。

今は音楽作りはすべてデジタル技術の時代・・・その時代に、状況はより複雑になってきています。ただ、そこまで話題が飛躍する前に、まだご説明すべき話題があります。

だって、なんでそんなに音を追求するのでしょうか・・・。


15.01
インデックスとイントロ

脚注1
日本ビクターの、オーディオショップ支援組織でした。
オーディオショップがどのように再生したらいいかなどのコンサルテーションをメインとした、プロ向けサービス機関でした。もっとも、いまもあるのかは知りません。おそらくないと思います。
ここでご紹介したときに、超ラボパーツといわれる一連の製品も発表していました。塗れば音のよくなるスーパーブラック、400芯の銅製のスーパーリッツ・スピーカーケーブル、200芯のスーパーリッツ・カートリッジケーブル、敷けば音のよくなる豚革シート、高いけどとってもいけるカーボン製ターンテーブルシート、インシュレーター、など・・・。当時の私は、自分で設計したアンプしか使わない人でしたので、スーパーブラックにはよくお世話になりました。当時のフィルム・コンデンサーには、実に効いたんですね・・・(^^) 。今のオーディオ用パーツのいくつかの原理は、同氏が見つけたものだと思います。
ネーミングの面白さは、初代所長さんである同氏(実はお名前を失念しました。トランジスタ技術も、ずいぶん昔なので手元に残っていません。中学か高校のころの号でした。ちなみにトラ技と電子展望が子供のころの愛読書でした)の人柄と造詣の深さを示していると思います。
この時代、だれもオーディオケーブルの音や、素材の音を語る人はいませんでした。でも、ラボ東京の名物所長さんは、「銅はどうどうとした音、銀はギンギンした音、金は柔らかい音」とわかりやすく話していました。この時代、今私たちが使用しているような高純度の素材はありませんでした。もしも今の時代までいらっしゃったら、また面白い話を聞かせてもらえたでしょうね・・・・。余談ですが、この方のお話が、今も出所知らずとして、わかったような素材の音として話題に上ることがあり、世の中って面白いなあと思います。

脚注2

縦笛(リコーダー)を吹くと特定の周波数で、ぽ〜っと鳴ります。これが、共振周波数です。
一般的にはスピーカー方向の部屋の辺の長さと音速(気温によって違うんですけど・・・)で一意に決まります。つまり、波長が部屋のその長さと一致すると、共振するのです。当然ですが、波長が整数分の一になる周波数も共振します。で、私の家の場合、だいたいこの値となります。共振すると、空気全体を振動させることになるため、大きなエネルギーを必要とするので、一定の出力を投入してスピーカーを鳴らすと、グラフのように特性が谷になってしまいます。




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