浜崎あゆみ
CAROLS


DVD情報
片面1層 MPEG-2 COLOR
アスペクト比4:3
NTSC エリアコード2
リニアPCM STEREO
映像時間5分

2004年の3rdシングルです。
過去2年間、アルバムを出すペースを控えていた浜崎あゆみです。でも、今年は調子を戻してきてくれているようです。うれしいことです。
今回のシングル・アルバムは、これまでの中でも、印象深いものとなっています。
それは、音楽そのものが、シンプルな形になり、そして、提供形態もシンプルになったことです。
実際のところ、提供媒体は4種類、CD、DVD、DVD-Audio、SACDとなっています。これは、世界初ではないかと思います。他に、携帯電話のダウンロードも行われていますので、5種類の媒体が利用されています。ですから、ひょっとすると複雑と誤解される方があるかもしれません。しかし、基本的な技術をそのまま使用しているので、シンプルな提供形態なのです。複雑なのは、現代の混乱したデジタル・コンテンツの提供形態のほうであり、音楽提供側がシンプルに対応すると、今回のアルバムの形態になります。
また、ここのところ行われていたCCCD/cds200の採用を、今回はやっと取りやめて、本来の音質になりました。これは、重要な変化を、エイベックスが遂げたことを示しています。
曲は、素直で真っ直ぐなもので、アコースティック中心のサウンドは、これまでの浜崎あゆみのアルバムの中でも、特に秀逸であると述べて過言ではありません。
また、同時にリミックスが2曲収録されており、これは、久々という感じもします。この曲そのものは、テクノ系リミックスに合わないのですが、とてもうまくリミックスしているので、曲の別な側面を表現するのに成功しているのではないでしょうか。リミックス本来の意味に立ち返っています。
つまり、このアルバムは、浜崎あゆみが明確に次のステージに進んだことと、エイベックスがアーティスト中心の立場に原点回帰したこと、つまり企業として次のステージに進んだことを、同時に示しています。
ところで、作曲のTomoya Kinoshitaは新登場です。また、ハモンドオルガンのDaisuke Kawaiも新登場です。
余談ですが、DVDはストーレートに再生するようになっており、余計なメニューがありません。好感が持てるところですね。DVDのメニューは、冗長なものを制作側が作りやすい傾向があり、利用者からすると不愉快なものが少なくないので、利用者サイドに立っています。


この曲のもつ意味
浜崎あゆみの曲は、強いメッセージ性を仁(核のことです)にしているものが多く、それが特徴でもあるのですが、そこにひとつの限界もありました。単一的なテーマに集中することにより、聴き手はそのテーマの先にどこまで進めるかという時に、足かせとなるからです。しかし、この曲はテーマそのものを多元的に受け取れるようになっています。
それは、表現する形態をシンプルにすることで、様々な受け取り方を出来るようになったことです・・・これは、古今東西の芸術で、最高の表現形態としているものの姿です。
この意味を説明する必要があると思います。
文学などが説明しやすいので、例にして見ましょう。
だれでも、中学くらいで学んでいそうなもので、それについて、全く異なる視点を示すことで解説します。

国破山河在 国破れて山河あり
城春草青深 城春にして草青深し

杜甫 : 春望の冒頭

755年、安史の乱で荒れ果てた唐の都長安を嘆きながらうたった詩の冒頭です。これに続いて、「感時花濺涙 時に感じては 花にも涙をそそぎ」と、人々の悲嘆をうたっていきます。
この詩は一般的には、ちりじりになった人々と、戦火の苦しみをうたったものとして理解されています。それはそれで、別にいいのですが、実は深い解釈をすることが出来ます。
それが、この冒頭の二節です。これ以降の節と、この節には大きな違いがあります。
冒頭の二節は、自然の営みの視点から人の営みを見つめて、対比させています。壮大な全く異なる原理で働く自然の中での、人の営みのはかなさを、そのままうたっています。この二節は、自然と人を対比させることでそれを強く訴えています。そして、この詩は人の中にその視点を移して行きます。壮大な自然の中の視点から、国、城、そして人の中の悲哀に視点を移していくこの詩は、杜甫がそれらすべてを見つめていたことを示しています。つまり、杜甫は空の彼方からこの事実を見据えて、視点を移動しながら、人の世の辛さ、はかなさをこの詩はうたっているのです。そのことを理解したときに、この詩は悲哀にくれた人々を描くだけではなく、人の世のなにが違うのか、そして、どこから人の世を見つめたらいいのかという視点も示していることに気付きます。悲しいばかりではなく、壮大な世界観がそこに見えてきます。
このように、解釈する視点を切り替えると、1つの作品には多重な解釈があることがわかると思います。ここで示したような解釈の視点は、実際のところ、広く世界的に認知されていますし、国、人種が違っていたも同じ受け取り方をしています。
別な例を示してみましょう。

still pond
A frog jumps in
Plop!

Ken Wilber:SEX, ECOLOGY, SPIRITUALITYより
これは日本の俳句の英訳なのでした
原句ははこれです

古池や
蛙飛び込む
水の音

松尾芭蕉

この詩は、松尾芭蕉の有名な句ですが、学校ではどう習うのでしょうか・・・先生によっては、「静かな精妙な光景を思い描いてご覧、静寂の中のひとつの動・・・美しいじゃないか」なんて感じに説明しているのでしょう。文学は、受け取るものがその意味を考えればいいので、その点は音楽と同じです。
そうした見方は、それでいいのですが、本当はもっと先の視点でこの詩を見つめるとき、心の底から打ち震える感動を与える句であり、そのためにこの句が有名なのです。アメリカ人であるWilberは、それを理解しており、この句をとても大切なところで引用しています。それは、800ページを超える大著sex, ECOLOGY, SPIRITUALITYのVolume 1 The Depth of the Divine, THE NONDUALを締めくくる場所です。この締めくくりは、壮大な本書のクライマックスでもあります。

「すべてが神以外のなにものでもない。だとしたら、そこにはなにもなく、だから、神もなく、あるのはただこのことだけなのだ。
あらゆる客観的なものはなく、主観的なものもなく、これだけしかない。この在り方に至ることもなく、そこから出ることもない。それは、絶対的で、永遠で、いつもすでにそこにある。存在そのもののシンプルな感覚、あらゆる在り方のシンプルで直接的な基本そのものであり、人の認識する4つの象限よりも先立って存在し、内面と外面に別たれた精神よりも先立って存在し、自らを見つめる自分と見つめられる自分よりも先立って存在し、世界が生まれるよりも先立って存在している。常に、今とは純粋な存在そのものであり、存在そのもののシンプルな感覚である。あらゆるものは空であり、そこから絶え間なく世界のすべてが始まり開かれていくのだ。自らを見つめる自分と、見つめられる自分である自己とは、宇宙そのものが来る器そのものなのである。

・・・・

あらゆるものは、自己そのものであり、自己とは空である。空とは自由にすべてが生まれだすことである。自由にすべてが生まれだすとは、自らも解放されているということだ。
禅では、もちろん、このことすべてをはるかにシンプルに、そして、直裁に指し示す

古池や
蛙飛び込む
水の音

Ken Wilber : SEX, ECOLOGY, SPIRITUALITY Volume1
The Depth of the Divine, THE NONDUALより
松永太郎氏の名訳がありますが、
Wilberの言い回しもちょっとややこしい所もあるので
ちょっと普通には読み難い気もしました
で、私が原著の言葉を含めて意訳しました

ちょっと長い引用でしたが、芭蕉のこの有名な句において、芭蕉が、宇宙そのものの有様を見つめていることを理解できる感性を、欧米人でも理解していることをご紹介しました。この感覚は、杜甫の作品を受け止める視点とも通じています。
この句が深く愛されている背景は、このような禅的な世界観からも、素晴らしい句であったからです。実のところ、芭蕉の時代にはこのような世界観はある程度常識的なものでもありました。ただ、現代の多くの文学愛好家には、共有されていない知識でもあるようです。

2004年10月1日から放送されている、パナソニックの薄型テレビのコマーシャルソングは、エンヤが日本語で歌っているのですが、芭蕉の野ざらし紀行から句を採用しています。そして、エンヤのコメント等は報道によると、次のようなものだそうです。

芭蕉の「野ざらし紀行」の中の一句「山路きて 何やらゆかし すみれぐさ」がモチーフになっており、
「小石から大きな山まで、1枚の緑葉から秋の紅葉する木々まで、鳥のさえずりから紫の花まで、
すべての自然のものには同じように人をインスパイアし、動かし、感動させる力が備わっている」
というメッセージを込めた。

ここでご紹介した解釈が、世界的に安定したものであることがお解かりいただけると思います。

2004/10/07

このような理解の仕方の違いは、受け手の力の違いにその源があります。
そして、様々な受け手に、それぞれの視点で受け入れられるものをもっている、それが芸術の多様性であり、芸術表現の最も進んだものが共通に持つ、1つの姿です。
このような多様性をもつこと、受け手の力に応じて様々な意味を明らかにしていけること、それが、芸術の姿として取り得る最上の形態です。そして、時代を超えることができる芸術の条件でもあります。
これは、音楽でも、全く変わらないことです。これまでの浜崎あゆみの音楽は、深さはありましたが、多様性と言う点では問題がありました。それが、受け止められる人と受け止められない人を大きく別ける原因でした。
carolsのシンプルさは、多様性をもつという、次のステージの特徴を実現したものでもあります。
そして、浜崎あゆみの表現様式が、次の時代に入ったことを示しています。


新生エイベックスの道
avexの松浦社長は、このアルバムの発売日前日の臨時株主総会で就任しました。
松浦社長に曰く「「浜崎の新曲に、僕らのやろうとしていることのすべてが詰まっている。気軽に音楽を楽しみたい人もいれば、クオリティーの高い音楽を求めている人もいる。その立場に立って提供していきたい」と述べたと報道されています。
これは全くそうだろうと思います。
音楽を提供する側は、質と、ビジネス、両方を追求することが必要です。
ですから、現在ある媒体技術に対応することはとても大切です。
そして、質を考えるならば、CDS200のようなCCCD技術は、廃止されてしかるべきです。

今までCCCDについて意図的に説明をしていませんでしたが、近日中に解説します

avexは、株主に対する言い訳としてのCCCDを取りやめ、音楽そのものを直視できる企業へと、進歩したのではないでしようか。そして、株主はそれらを織り込み済みで、松浦社長就任は、株価には強い影響はありませんでした。つまり株主はCCCDに対して、なんら評価もしていないのでした。


辛口編・・・曲の収録
前作から、いつもの私の感覚で解説を加えることにしています。
親しい友人には言葉でそのまま言うような話題ですが、これは、ちょっと辛口で、こうした観点で述べていいアルバムを出せるのは、日本では浜崎あゆみなど数人しか思いつきません。だいたい、音楽を聴く側は世界中のものを聴いているため、必然的に一番いいものばかりを聴いてしまうようになってしまいます。で、今の浜崎あゆみのレベルに対応するために、あえて書きます。
今回のアルバムは、秀逸ではあるのですが、いくつか気になる点があります。
一番気になった点は、重要なパートを占めているピアノという楽器そのものの選択が、違うのではないかということです。これは、演奏家や作曲の話題ではなく、楽器そのものの選択です。ちょっと音が、軽く綺麗過ぎ、浜崎あゆみの声の収録も同じカラーがあり、曲そのものにシングルカラーな印象を与えています。優秀なデザイナーのデザインが、なぜかワンカラーで退屈になりやすいのと同じに、曲そのものに独特な印象をアルバムの音が与えています。曲そのものの多様性と対極をなしてしまっており、曲と音のバランスが崩れています。
特に、CDの音質にその傾向が強いという印象があります。DVDは、まだ良いのですが・・・。ピアノがもうちょっと違うと、この傾向の音が薄くなるのではないかと思います。
また、この曲であれば、もっと真っ直ぐに浜崎あゆみの声を捕らえていいのではないでしょうか。そうであれば、この音は、もうちょっと厚くていいはずです。ということは、ピアノは、ベーゼンドルファー・インペリアルなどがきっと合うわけで、ここに収録されているこのピアノの音は違う気がします。声がもっと直裁に録られ、ピアノがベーゼンドルファーであったとき、この曲のイメージは、より深く、より多様に私達に届くのではないでしょうか。
あと、ミキシングですが、スピーカーでの再生はちょっと難しいタイプですね。私のシステムでは困りませんが、システムによっては音が渾然一体となる部分があるかもしれません。


辛口編・・・アルバム編
いろいろな媒体で発売されていますが、媒体毎にかなり違いを感じます。
私のシステムで聴く限り、2chの音質はDVDが一番スタンダートな音質である印象があります。
CDとしての再生はCDとハイブリッドSACDで出来ます。これらの音質には、違いがありますが、それがハイブリッドSACDと通常のCDの音質差なのか、マスターが違うためなのか、聴くだけでは判別は出来ませんでした。おそらくSACDは、PCM−DSDコンバーターを使用して作っていると思います。そして、DVDに通じる音質です。ひょってすると、SACD用音源(恐らくDVD用PCMマスター)から制作したのではないでしょうか。いずれにしても、純粋なCDとハイブリッドSACDのCD側では、異なる音色になっています。
DVDとCDの音質傾向の違いから、マスターは192K 24bit PCMではないかと思います。つまりCD向きのマスターではないということです。で、ダウンコンバートの際の音質設定に配慮不足があったのかもしれません。非共測なダウンコンバートなので、デシメーションフィルタの設定やその他のものもかなり微妙です。
そのためか、CDの音質が全媒体でいちばん気になりました。ピアノの音を基準にして音質を決定した気がします。そして、ピアノの選定の問題点を助長してしまい、曲に独特なカラーをアルバム製作段階でも加えてしまったのではないでしょうか。それとも、今回はマスタリングエンジニアの感性が及ばなかったのか・・・さすがに、その点には判断が出来ませんでした。


CD+DVD
CD
avex AVCD-30650 \1,890
avex AVCD-30651 \1,050
DVD Audio
HYBRID SACD
avex AVAD-91208 \1,575
avex AVGD-30652 \1,575
オリジナル発売日 2004年09月27日
媒体と再生できる機器の関係
媒体
CD
DVD
DVD-Audio
SACD
非圧縮/可逆圧縮方式(つまり音楽データが損なわれない方式)
2ch PCM(CD:44.1K/16bit)再生
CD + DVD / AVCD-30650
CD / AVCD-30651
DVD-Audio / AVAD-91208
96K/24bitとして収録
HYBRID SACD / AVGD-30652
2ch PCM(96K/24bit)再生
CD + DVD / AVCD-30650
この形式は収録されていません
CD / AVCD-30651
この形式は収録されていません
DVD-Audio / AVAD-91208
×
×
HYBRID SACD / AVGD-30652
この形式は収録されていません
5.1ch (96K 24bit MLP)DVD-Audio再生
CD + DVD / AVCD-30650
この形式は収録されていません
CD / AVCD-30651
この形式は収録されていません
DVD-Audio / AVAD-91208
×
×
×
HYBRID SACD / AVGD-30652
この形式は収録されていません
5.1ch SACD-Audio再生
CD + DVD / AVCD-30650
この形式は収録されていません
CD / AVCD-30651
この形式は収録されていません
DVD-Audio / AVAD-91208
この形式は収録されていません
HYBRID SACD / AVGD-30652
×
×
×
不逆圧縮方式(つまり音楽データが損なわれる方式)
2ch 映像再生 / Dolby Digital
CD + DVD / AVCD-30650
×
×
×
CD / AVCD-30651
この形式は収録されていません
DVD-Audio / AVAD-91208
この形式は収録されていません
HYBRID SACD / AVGD-30652
この形式は収録されていません

作詞
作曲
編曲
オリジナルミックス
新オリジナルミックス
アコースティック
浜崎あゆみ
CD / SACD Hybrid部
01
CAROLS"original Mix"mixed by Koji Morimoto
02
CAROLS"criminal Tribal Mix"remixed by CMJK
03
CAROLS"hammond B3 WHISper"remixed & play by Daisuke Kawai
04
CAROLS "Original Mix" -Instrumental-mixed by Koji Morimoto
Mastering Engineer Kazusige Ikehata (FLAIR MASTERING WORKS)
DVD
01
CAROLSdirected by Masashi Muto
DVD Audio
Group 1
01
CAROLS"original Mix"mixed by Koji Morimoto
リニアPCM
02
CAROLS"criminal Tribal Mix"remixed by CMJK
03
CAROLS"hammond B3 WHISper"remixed & play by Daisuke Kawai
04
CAROLS "Original Mix" -Instrumental-mixed by Koji Morimoto
Group 2
01
CAROLS"original Mix"mixed by Koji Morimoto
パックPCM
SACD
SACD
stereo
01
CAROLS"original Mix"mixed by Koji Morimoto
02
CAROLS"criminal Tribal Mix"remixed by CMJK
03
CAROLS"hammond B3 WHISper"remixed & play by Daisuke Kawai
04
CAROLS "Original Mix" -Instrumental-mixed by Koji Morimoto
SACD
multi
01
CAROLS"original Mix"mixed by Koji Morimoto


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