第08章 JPOSに心を打たれる | オーディオの遍歴 INDEX | !第10章 フルデジタルシステムへの移行 |
KIMBER KABLE KCAG 純銀のケーブルです |
私の耳がドイツの音により洗練された結果、JPOPSが気に入ってしまいますし、音の嗜好が大きく拡大してしまい、自宅のシステムの音に我慢できなくなってしまいました。
帯域感が狭すぎるのです。
私はフランクフルトのハイエンドショップで相談して、私の希望する方向の音を出せるケーブルを紹介してもらいました。それがKIMBER KABLE KCAG(キンバーケーブル カーツェーアーゲー)脚注22です。
純銀で作られたこのケーブルはアメリカ的な音を体現しているトランスペアレントと好対象を成す音をしています。その広汎に伸びた音の帯域感は、システムのバランスが悪いと大変なトラブルを招いてしまいます。いろいろな人が、同社のハイエンドケーブルが金属的な音であると誤解しいるようです。その実体は、システムのバランスが取れたとき大胆で限りなく豊かな音を実現してくれます。
アメリカやヨーロッパのオーディオ雑誌は同社のケーブルに対して「最高にチューニングされたシステムに導入するとシステムの真価を明らかにするケーブル」と賞賛していました。もっともその高価な価格に驚いたりもしました。
私は、オーラルシンフォニックス脚注23系列の音はあまり好みに合わず、あらゆるインターコネクトをKIMBER KABLE KCAGに統一しました。
フランクフルトの高級オーディオショップ RAUM TON KUNST 写真の左から二番目の人がオーナのKUNSTさん |
KIMBER KABLE KCAGを初めて購入する際にフランクフルトのハイエンドショップRAUM TON KUNSTでは、気に入らなかったら返品してくれていいと提案してくれました。そう、私がはじめてトランスペアレントを紹介してもらったバージニア州のお店と同じ提案をドイツでも受けたのでした。ハイエンド製品を取り扱うお店の心は世界で同じでした。
このお店は、日本ではあまり見かけないしっかりしたお店でした。それを垣間見たのは、私がハイエンドショーで心を囚われたメーカーの製品がほしくて、お店に取り寄せを頼みに行った時のことです。お店の答えはノーでした。
「私は長い間いろいろなメーカーができては無くなるのを見てきました。あなたがご希望の製品は確かに素晴らしいと思いますが、まったくの新興メーカーです。高額な製品を売る以上私には永くお使い頂く責任があります。あのメーカーがそうした私の責任に答えられるかまだわからないと思います。ですから、お売りするわけにはいきません。取り扱っているお店をお調べしますし、私からもそちらのお店に連絡しておきますから、そちらに行って頂けませんか?」
私はその誠実な対応に驚きました。ケーブルが1本日本円で5万円もしてしまうものを取り扱う人は、あらゆる意味で卓越が要求されていると思います。このお店では安い普及用製品も置いていましたが、日本円で1000万円以上するスピーカーも取り扱っていました。納得の行くことでした。
Apogee Caliper Signeture |
ESP Consert Grand 高さ1.64m 重さ113Kg |
私の耳には、ドイツで聴いた広帯域で可憐な高音が記憶されいました。KIMBER KABLE KCAGによりシステムの音はかなり期待する音になっていましたが、どうしてもApogee
Caliper Signetureには出せない音でした。また、このタイプのスピーカーは日本での修理が技能の関係で困難であり、私のように大きな音で楽しんでいると振動盤がやがて緩んで終わりになることがわかっていました。
私は、心から音楽を楽しませてくれたApogee
Caliper Signetureに別れを告げる必要があることがわかりました。
あまり繰り返し機器を変更することを好まないので、次に導入するスピーカーは人生のかなりの時期まで楽しむようにしようと決心しました。幸いに自動車について趣味が無いので、ある程度の負担は耐えられそうでした。
この新しいスピーカーを探すために費やした時間は1年近くかかりました。たくさんのスピーカーを試聴しました。これぞと思うスピーカーは自宅に持ってきてもらい試聴しました。
その結果私がたどり着いたスピーカーがESP Consert Grandです。
このスピーカーは、実物を試聴して購入したものではありません。同社の普及クラス(といっても100万円は超えていました)のHarpという製品を聴いて、こんに製品が作れるメーカーであればと、仕様だけでオーダーしたものです。
ESPは、当時のアメリカの新興メーカーで、使用しているユニットはすべてヨーロッパ製ハイエンドユニット、採用されている音響理論は鏡像を前提として無限に広がる広大な仮想音源を実現するためのものであり、実際に再生される音はスピーカーの外側にも定位します。それでありながら正確無比な位相特性を実現しており、あらゆる音の違いを音楽的に美しく描き出してくれます。
ESPという企業は、1年ちょっとでなくなりました。設計者はアイルランド人でしたが、会社のオーナーであったチャイニーズと袂を分かち、ヨーロッパに帰国しています。こうした機器の設計者は、連絡を取ることが出来るため、私のESP Consert Grandがトラぶった際は、どのように修理したらいいかについて、詳しく連絡してくれました。
このスピーカーの導入は、即決でした。ハイエンドオーディオ機器は、いつまでも製造されている可能性は無く、一期一会の場合も少なくありません。特にスピーカーは、作れる設計者、部品、職人が揃わないといけないので、このような高級機は芸術品と同じであり、タイミングがちょっとでもずれると入手できません。私がオーダーしてから待つこと半年、時間がかかりました。届いたスピーカーには問題があり、交換にまた数ヶ月、時間がかかりましたが、その甲斐はありました。いまも私はこのスピーカーの音を楽しみながら、このページを書いています。
案の定というか、ESPはすぐに活動を停止し、設計者はアイルランドに戻りました。今では消息はわかりません。企業の成功と製品の良し悪しは関係してくれるとありがたいのですが、往々にして良い製品を出したとしてもそれだけでは、企業の成功には繋がりません。買う側は企業の成功よりも良い製品のほうが助かるわけですから、本当に一期一会という感じですね。幸いに、使用されているユニットは大変有名なハイエンドユニットなので、職人の手を経れば修理には困りません。日本にあるESP Consert Grandは3セット、全世界でも20セット程度しかないと思います。
私の愛用していたApogee Caliper Signetureは、お店を通じて愛用してくれる人を探し、大阪に送られていきました。このスピーカーの最後の寿命を全うするに相応しい人に渡ったと信じています。
新しいスピーカーの重さは1本131Kg、私が住んでいた荏原中延の古い家では設置は出来ません。
この写真は、私のリスニングルームで、 初代のデジタルパワーアンプTacT Milleniamのときのものです これらの話題は次章にあります |
ドイツのホテルで朝食を食べながら、日経新聞を読んでいた時です脚注24。私は銀座から歩いて17分のマンションが5000万円台、しかも金利は3%という広告を見て驚きました。そう、東京の不動産は底値になろうとしてたのです。当時のヨーロッパやアメリカの住宅ローンの金利は7%〜10%、日本の金利は異常に思えました。
私は、オーディオ用に設計変更に応えられるマンションを探し、更地の状態で販売されていた今のマンションを見つけました。この間、何件も見に行きましたし、手付を打ち取り消したりを何回か繰り返しもしました。
これはESP Consert Grandを見つける前後のことでした。建築に要する期間は1年でした。それが私の今住んでいるところです。21畳の居間がそのまま私の生活空間であり、オーディオを楽しむ部屋でもあります。
部屋の設計はS氏の支援を受けて、最低限の設計変更と最高の布製壁紙、スイス製ベルベットカーテン、そして床の補強と共鳴防止を施しました。そしてオーディオ用に専用電源回路が3つ、使用したケーブルはヨーロッパ製です。さらに全室にLANを配線し、オーディオ用電源回路と徹底的に隔離しました。この部屋は大成功で、居間とオーディオの共存が達成できました。
ESP Consert GrandはKRELL KSA-100Sの能力では鳴らしきることが出来ないとわかっていたスピーカーでした。しかし、素晴らしいアンプを見つけるための時間はたっぷりあります。
ゲルピンさんが友人から譲られたKRELL KSA-100Sを私に一台譲ってくれることになり、私はスピーカー毎にKRELL KSA-100Sを用意できました。ステレオアンプで高域と中低域を別々に駆動できます。ドイツのハイエンドショップでKIMBER KABLE KCAGを専用に用意してもらい、バイアンプ駆動の私の中核システムとなりました。
このようにして一応の落ち着きを見ました。私の課題は、自分の得た新しい音楽観に適応するアンプを、長い時間をかけて見つけることだけでした。でも、急ぐ気などありはしませんでした。それなりに堪能できる音だったからです。
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ドイツ語の会社名ですから製品名もドイツ語読みにしていますが、アメリカのケーブルメーカーです。私は結構な期間、ドイツの会社だと誤解していました。
やはりアメリカにある高級オーディオケーブルのメーカーです。
20代後半から自分では新聞を取ったことがありません。常宿にしていたのが高級ホテルだったので1部700円以上する日経新聞欧州版をいつも私に届けてくれ、ドイツで生活中はいつも新聞を読んでいたのです。世の中、面白いものですね。