ロボットのある生活

2003/4/07

今日は鉄腕アトムの誕生日

私が子供の頃に放送が始まったのが鉄腕アトムでした。
よく覚えていないのですが、白黒テレビが家にあるときに放送が始まったのか、テレビが後だったのか・・・。
なにしろ、テレビを初めて見るのですから、番組もアニメも初めて・・・しかも、鉄腕アトムそのものが毎週放送するテレビアニメとして初めてなのですから、なにがなんだかわからないというのが本音です。
今でこそ、どんな番組であったか後知恵で鉄腕アトムを理解していますが、当時の私には、どんな番組だか、ちっとも理解できていませんでした。面白いだけだったわけです。
1999年にAIBook発売されたときに、私は購入しようとしなかったので、会社ではいろいろな人から不思議がられました。なんか、玩具としてのロボットというのは、イメージがなかったんですね・・・役立つものなら、欲しかったんです。
そういえば、SONYのAIBookチームの人と偶然にダイビングで一緒していたこともありました。
ただ、日本てのはかなりハイテクの国になっているので、知らずに私達の周りは、ロボットみたいなものに囲まれています。
電子炊飯器なんか、コンピューターが入っていますよね。笑い話ですが、仕事でヨーロッパへ行った際に、ドイツで夜飲みながら、こんな話を現地の連中としていました。

「日本はなんでもハイテクなんだろ、ドアも自動ドアが多いとか聴くけど」
「もちろんさ、大体のお店のドアは、自動ドアだよね」
「ほー、凄いなー」
「そんなので驚いてちゃダメさ・・・日本人はご飯を食べるだろ、どうやって作るか知っている?」
「鍋でボイルすんじゃないの」
「日本ではね、コンピューターを内蔵した専用のライスクッカー(電子炊飯器のことです)があるんだよ。調理過程を分析して、最適な状態に自動調理するんだ」
「スゲー (Great!)」
「でね、お風呂も、ボタン一発で準備できるんだぜ」
「え・・・聞いた事無いよ、そんなシステム。ヨーロッパでは、ちゃんと見ていないと溢れちゃうぜ。なんてハイテクな国なんだ・・・」

考えてみれば、日本のエアコンも、温度に応じて勝手に運転しています。日本のエアコンほど賢い機種は、あまり海外では見かけません・・・ハイテクの国とヨーロッパで言われるのも、もっともかと思います。
鉄腕アトムの誕生日の今、なんだかんだと、ロボットのようなものに囲まれてはいたんですよね、日本の私達は・・・。

だから、掃除してくれるのが欲しかった

そんなに便利な日本でも、掃除は人が自分でしないといけません。
私は、掃除機はイギリス製のものを使用しています。DysonのDC3という掃除機です。

私の使用しているタイプは、右の写真よりも、もっと昔のタイプなので、色がブルーです。

ダブルサイクロンタイプなので、バッグがありません。そして、ゴミを収集しても吸引力は下がりません。また、hepaフィルタータイプなので空気がきれい・・・・。いいこと尽くめみたいですが、日本の掃除機と違い、もともと吸引能力が低くて、日本の掃除機のゴミが溜まった状態よりも、吸引力はないんですよね。ゴミを収集しても性能が落ちないというカタログにはウソはありませんけど、もともとの性能が問題・・・というのは、さすがイギリス製・・・。
でも、そうした掃除機の問題よりも、やっかいなのは掃除そのものでした。
なんで自動的に掃除する機械が無いのかなー、と不思議に思っていました。そんなに機械工作が苦手なほうではないので、自分で作ってみようかと思いもしましたが、だいたいそれほど時間がありません。このホームページも、いつの間に書いているのかと不思議がられています・・・(^^;
そんな中、ナショナルがお掃除ロボットを開発していると聴き、楽しみにしていました。でも、いつまでも実用化しないみたいでした。
そんなある日、ちょっと用があって渋谷の東急ハンズ渋谷店に寄りました。このお店は、行ったことがある人だとお分かりだと思いますが、すべてのフロアが螺旋状につながっています。ですから、一番上に行き、のんびりと降りてくると、すべてのフロアを見ることができます。で、いつも行くとそうしています。
で、4fに行った時に、目を引くものがありました。

「あ、お掃除ロボット」

お値段は、39800円、iRobot社Roombaという製品です。こうした意匠の品物を見てしまうと、興味を惹かれてしまうのが私です。早速、買うことにしてしまいました。衝動買いができる価格というところが、また憎いところです。レジにもって行き、ちょっと話してみました。

「面白い製品ですねー」
「はい、それで買われるお客様も多いです。この製品はNASAの技術で作られていまして・・・」

実際のところ、nasaというよりも、国防省がちょっと関係している程度の会社でした。

命名・・・カブトガニ1号、2号

使用してみて、いきなり気に入ってしまいました。
高さが低いので、ソファの下なども掃除してくれます。
ただ、バッテリーが20畳程度の掃除で一杯一杯でした。そのため、居間の掃除をしたら終わりです・・・(^^;
で、早速もう一台買おうと思いました。
ま、アメリカ製ですから、アメリカから買ってもいいかなーと思い、調べてみたら、アメリカで数社だけ海外にも発送している会社がありました。アメリカの価格は、200USDくらいです。もっとも、送料に99USD必要でした・・・(^^;
ただ、私が東京ハンズで買った頃には日本に輸入されていなかった、急速バッテリーチャージャーも販売していましたので、一緒に買いました。結局、全費用で、ほぼ日本で買うのと同じ値段になってしまいました。
右の写真がアメリカから取り寄せたroombaです。日本で買ったものも、同じ箱でした。タカラからも販売されるようで、その場合は違う箱になっていると思います。色が違うみたいですので・・・。
上に載っているのが、急速バッテリーチャージャー、下の大きな箱が本体です。中には、バーチャルウォールユニットが1機付いています。
この取り寄せたものと、日本で買ったものは、動作が違います。欧米の製品は、改良が行われる毎に製品に反映するので、同じ機種でも違いがあるのは、そう不思議でもありません。
で、掃除しているのを見ていて、カブトガニがゴソゴソ動いている感じがするので、カブトガニ1号、2号と呼ぶことにしました。

こんな風に動作します


居間を掃除しているときの写真です。
外周部で濃い色に見えている場所が、衝突型のセンサーです。
つまり、ぶつかりながら、壁や家具を判定します。
別に、それほど強いぶつかり方はしませんが、CDが積んである程度だと飛ばしてしまいますね。ですから、ぶつかって困るものは、片付けてから動作させます。
また、階段などに対するセンサも搭載しており、一応避けることができます。実際には、時々検出に失敗して、途中で停止したりしますけど・・・転げ落ちたりはしません。
roombaの動作の仕方が、命名の由来だと思うのですが、部屋の真ん中から、くるくる回りながら掃除を開始します。そして、ぶつかる場所を見つけると。時計の反対方向廻りに掃除を始めます。ルンバを踊っているみたいなのと、roomを組み合わせた名前なんですね・・・(^^;
動作のイメージは右図の通りです。
■roombaは右利き
ところで、反時計回りに動作するという方向性には、理由があります。
右図がRoombaの底面の図です。
左端の「周辺クリーニング用サイドブラシ」をご覧ください。このブラシは、やわらかい素材で作られており、動作中にクルクル周っています(当然ですが、床に置くと右側になります)。
このブラシを周辺部に摺り寄せるように動作するため、つまり右側に回っていくため、反時計回りとなるわけです。
■2段階のごみ収集システム
バッテリーで自走するroombaは、強力な吸引用モーターを使用できません。そこで、工夫されたごみ収集システムを持っています。
このごみ収集は、2段階で行われています。
初めのゴミ収集は、中央にある大型塵収集用攪拌ブラシが行います。これによりゴミをすくい飛ばして、内部に取り込みます。次に、微細塵収集用吸引機構が、ゴム製の細長い吸引用のダクトにより、細かい塵を収集します。小さなファンで作る空気の流れなので、可能な限り細くして、床に密着させているわけです。
これらのゴミは、大きな塵はバッグレス塵収納部に、微細塵は、吸引機構のところに収納されます。
■アメリカ人の設計だからか・・・
roombaは、よくできていますが、回転する物が多いために、ケーブルやカーペットの端でケバケバしたものを巻き込み易い構造になっています。
日本の家庭ほど電気製品が多くある社会は珍しいので、そうした困った点があるのは、アメリカ人が設計した以上、やむをえないような気がします。
ですから、うまく使うには、そうしたものを事前に整理しておくことがコツとなります。でも、悪いことではありません。部屋を整理する習慣になるからです・・・(^^;
また、入って欲しくない場所は、バーチャル・ウォール・ユニットを使用して、指定することができます。
このユニットは、本体に1台付属しています。中には単一乾電池2本を入れます。このユニットからは、レーザー光が出ているわけではなく、適当なledの光が出ているだけみたいです。図ほど方向性はありません。
■知恵は昆虫並み
私が「カブトガニ」と読んだ理由があります。その動作が、映像で見たカブトガニに似ていたからです。
動作しているのを見ていると、知恵があるとは思えない点があります。ある程度は認識しているみたいですが、部屋の形を十分に理解しているというよりは、なにも理解していないというほうが正しいみたいです。
で、行き当たりばったりで、ぶつかりながら動いています。これは、センサーがぶつからないとわからないという衝突型のセンターだからです。三葉虫も目があるとは思えない動きをしています。
一応、画面では低衝撃型スマートバンパーと書きましたが、原文は「non-marring」とうたっています。しかし、壁やドアに、ガン、とぶつかるのを見ていて、そりゃ言いすぎだろうよと思い、そう訳しました。
センサーの能力は、重要ですが、凝り過ぎるとセンサーそのものもその情報処理のコストも高価になってしまいます。
右の写真は、GACKTが使用しているという、スウェーデンのelectrolux(国内では東芝)が開発したTrirobite(トリロバイト/三葉虫)です。この製品は超音波センサーを利用しており、壁に衝突することはありません。なかなか賢いですよね。
このようなセンサーを搭載しているので、部屋掃除の戦術も違います。
triTOBiteは、部屋の周辺部分を調査して、直線方向に掃除を行うようになっています。この戦略は、trirobiteがもつ、壁から2cm以内、コーナーでは10cm以内を掃除しないという仕様から生まれたものです。
つまり、掃除漏れがある事を前提にしており、そのため、厳密に掃除するよりも、美しく掃除することを目指している設計になっています。また、バッテリーが少なくなると自動的に充電ステーションに戻るなど、よく出来ています。
ヨーロッパらしい素晴らしいつくりですが、問題は価格です。日本円では、20〜25万円くらいになってしまいます。roombaの5〜6倍の価格となります。
roombaは、アメリカでは世界初の掃除ロボットと宣伝しているのですが、trirobiteが世界初だと思います。で、明確にこの製品を意識して作られているようです。
部屋の端まで掃除するためには、ある程度衝突することは避けられないので、高価になる超音波センサーを廃止し、衝突型にする・・・ということですね。
このように、簡素化する戦略は、生物にも見ることができます。
私達のような哺乳類は高度なセンサーである目とか耳とか多くの複雑なメカニズムを搭載しています。しかし、この地上で最も繁栄している生物は、昆虫です。昆虫は、シンプルな目的に対応したセンサーしか持っていません。それで、反射的な動作をするのですが、この配置が微妙で、それによりなにか知識があるように見えます。
たとえば、超音波で獲物を探すコウモリは、夜に蛾を探して捕獲するのですが、ある種類の蛾はその超音波に反応して、パタッと落ちるように飛びます。つまり、高度なセンサーに、ちゃちなセンサーで対抗しているわけですが、有効ですね。
roombaは、アメリカ人らしい、実用的な発想で作られたものですね。
で、その考え方は、昆虫そのもの・・・実は、カブトガニは昆虫の仲間です・・・(^^;
それでカブトガニ・・・と思ったんですかねー

私の使っているお掃除ロボット、アメリカのメーカーですが、中国製です。つまり、カブトガニ2号は、ほぼ地球を一周して私のところに届きました・・・平和な話題ですこと・・・(^^)

ロボットのある生活

古代ローマにおいて、ローマ市民である程度にあった階層の人々は、多くの奴隷を使っていました。もっとも、日本語で奴隷といわれるその人たちは、今で言うと使用人です。

ローマ時代のこのような関係は、主人側をパトローネス、奴隷側をクリエンテスといいます。現代にはこのような主従関係が存在しないため、用語に困る点があります。パトローネスは、クリエンテスの服従と労働と引き換えに、彼らを身をもって守ります。これは、専門用語ではレッドのミームと呼ばれる考え方です。現代とは遠く離れた感覚ですので、今の感覚で判断したりしないよう、注意してください。

現代の日本では、そんな使用人はほとんど居ませんが、自動化されている私達の周辺は、ローマ時代の使用人に換算すると20人以上といわれています。
そして日本では、今日、アトムの誕生日を祝っています。そして、そんな時、アメリカはイラク侵攻を進めています。
このような世界の平和のルールが大きく変わろうという時代は、科学/技術の豊かな結果がもたらしています。
私達が家庭でお掃除ロボットを動かし、電子炊飯器がおいしいご飯を炊いているそのとき、アメリカのイラク侵攻では、巡航ミサイルや無人偵察機など、目的に応じて作られたロボットともいうべき兵器が使用されています。
そもそも、アメリカの攻撃の根拠となった大量破壊兵器こそ、科学技術の成果でもあります。
科学技術の進歩は、私達の社会に本質的な危機をもたらしましたが、
科学技術自体には、善悪の意味はありません。
それを定めるのは、私達・・・。
アメリカのイラク侵攻と同じ時、アトムの誕生日を祝っている私達は、いろいろな意味のロボットを日常の生活で使っています。そして、それこそ、私達がそのままに戦争に対するアンチテーゼとして存在している証であり、こんな時代に、能天気なお祝いをしている・・・と恥じ入る必要は何もありません。それどころか、そうした生活こそ人類の将来におけるメインテーマであると主張する権利を、私達は持っているのではないでしょうか。
これからも登場するであろう様々なロボット達をうまく使い、人の生活のあり方を形にすることは、平和を叫ぶのと同じくらい、私たち日本人にとって大切なことかも知れません。

・・・・
心を忘れた科学には
幸せ求める夢が無い
・・・・

手塚治虫原作
テレビアニメ ミクロイドS 主題歌より

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